天丼なら3杯は食べられる

 1人の男が机の上のモニターを観て、ほくそ笑んでいる。モニターには『非常事態対策室』の様子が映し出されていた。

「いつまでクダラナイ会議を続けるのだろう…」

 男は呟いた。


 ここは、ユー国の駐留軍の司令室である、男はジェー国侵攻軍々司令の将軍であった。


 ノックの音がしたあと、一人の将校が入って来た。

「軍司令官閣下!報告に参りました!」

 将校は侵攻軍の参謀であった。

「現在、ジェー国への侵攻作戦はかつに進行しており、ジェー国々民は全く動揺をしていません。」

「ジェー国の一般社会は何の障害も無く、運営されています。」


 将軍が参謀へ問いかける。

「今の政府は、有っても無くても同じだという事だな。」

 参謀:

「その通りでございます。」

 将軍:

ジェー国政府首脳連中達は自分たちが一番安全な所に居ると思っているが、我々から見れば…」

 参謀:

「ネズミ捕りの中のネズミと同じですね。」

 と、2人で笑い合う。

 将軍:

「しかし、こんなにも上手く作戦が進むとは思わなかったな。」

 参謀:

「これも、長年の工作と協力者のおかげです。」



 ジェー国政府は最近、『ユー国友好国連合』から離脱して、ユー国の敵対国のチー国やアール国へ接近して同盟関係を築こうとしていた。

 ユー国大統領は、今のジェー国政府を廃棄して新たに親ユー国的な傀儡政府の樹立を目論んでいた。


 ちょうどその時に、例の巨大生物が現れたのだ。ジェー国政府首脳はスグに『非常事態対策室』へ避難した。既にユー国は『非常事態対策室』の存在を把握していて、協力者を使って独立ネットワークにユー国との中継器を組み込んでいた。ユー国が『非常事態対策室』と現場各機関への情報を自由に操れる様になっていたのだ。


 政府首脳が『非常事態対策室』へ避難した直後に各現場機関へ

「ユー国が巨大生物対策への支援の為に支援部隊を派遣するので協力して指揮下に入るように」

 と指令・通達があった。

 これはユー国からの偽情報で、支援部隊は実は侵攻部隊であった。ジェー国軍は指令通りに友好的にユー国の指揮下に入り、ユー国軍は完全にジェー国の全てを短時間で掌握した。


 。だが、自身を支える程の食料を確保できずに日が暮れる前に死んでいた。


 次の日に国防軍現地司令部が

「『非常事態対策室』でエネルギー発生用の原子炉がメルトダウンを起こし、政府首脳全員が死亡した。」

「国防軍現地司令部を中心として、残った国会議員や各省庁の上級幹部で暫定臨時政府を樹立した。」

 と、発表した。


 国防軍現地司令部のバックにはユー国軍がいた。ユー国軍は表に出ずに新政府を樹立する様に指令していた。暫定臨時政府は1ヶ月後に総選挙を行い、その結果で新政府首脳を選出すると発表した。

 選挙の立候補者選びにはユー国の協力者が優先的に選ばれていた。1ヶ月後には親ユー国の傀儡政府が誕生するであろう。


 地上との情報が遮断された『非常事態対策室』にはユー国が作り出した巨大生物やUFO・宇宙人などの「非常(識)事態」が次々と通報されていた。彼らはこの事態の命名に無駄な時間を費やしていた。『非常事態対策室』内にも協力者が何人か居た。協力者のオペレーターを通じて密かにユー国からの指令が伝えられていた。

 協力者のおかげで、会議はますます不毛な物へとなっていった。

 不思議な事に『非常事態対策室』内の誰一人も、外へ出て現場を確かめに行こうとしないのだ。それは、彼ら達が一番安全な所に居ると信じているからだ。


 将軍:

「今日は何が襲って来るのだ?」

 参謀:

「巨大ロボットの予定です。」

「既に映像・データーは完成済みです。」

 将軍:

「宜しい、協力者のロボット工学博士に『鋼鉄の同志』と命名させよう。」

「アール国の関与を匂わせる様にするのだ。」

 参謀:

「了解しました!」

 参謀は敬礼すると、ドアへ向かって歩き出した。ドアに手をかけて室外へ出ようとした時、振り返って将軍に質問をした。


 参謀:

「軍司令官閣下、何時までこの茶番劇を続ける予定ですか?」

 将軍:

「選挙が終わり、新政府が樹立するまでだな。」

 参謀:

「その後は?」

 将軍:

「暫定臨時政府のにするのだ。」

 参謀:

「それでは中の協力者は…」

 将軍:

「旧政府の協力者はもう必要ない、新政府には新たな協力者を作れば良いのだ。」

「あの部屋は外からの放射能を防ぐ様になっている。」

「つまり、中からの放射能が外へ漏れ出す危険は無いのだ。」

「入口を完全に封鎖すれば、中の真実は誰も確かめる事は出来ない。」

「まぁ暫らくは、中の連中に夢を見させてあげようではないか。」

 将軍はニヤリと笑った・・・




 ここは首相官邸の地下深くにある『非常事態対策室』である。

 核攻撃に耐えられる程の厚い鉄筋コンクリートと放射能対策の鉛の装甲に囲まれた壁の中に、100人以上の人間が3年間生活出来る空間と食料・エネルギーが備蓄されている。

 この部屋の中で今日も『緊急対策会議』は続いている・・・


 ―おわり―











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緊急(?)対策会議 わたくし @watakushi-bun

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