第18詩 【ホタル】
ひとり暗い林道を歩きながら
ホタルを捕まえた
空中で何度かの空振りのあと
一匹の光るホタルを
両手で包み込んだ
私の掌の中で
ホタルの呼吸(いき)が光る
影絵で作る犬を膨らませたかっこうの
両手の中をうかがうと
この世の面白さがこみあげてきて
自然と両手をゆっくり夜空にさしのべた
ひとりの人間の拳ほどの暗闇の中から
ゴツゴツと煮えたぎった天地の闇の中へ
不思議な発光は幾度も私の手の中で
想いをかけめぐらせていたものか
もう二度と 振り返るともしれぬ
小さき玉響(たまゆら)は
ほのかに昇り発った
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