弐と零と壱

 その後の事はよく覚えていない。

ただ気づけばこうして枷をつけられ牢屋にいた。

独房には自分以外の者などいる筈もなく、顔を合わせるのは時折くる看守だけ。

呼び名は「ソラビト」。なんでも自分以外にあと八人いるらしい。

 ツヴァイは真っ黒の天井を眺めた。

「…………。」

 恐らく自分はいずれ処刑されるのだろう。

外には出たいと思ってる。やらなきゃいけないことがあるからだ。

だがそんな簡単な事ではない。

幾ら不思議な力を手に入れたとは言えども一人で脱獄するのは現実的ではない。

何より助けなど来る筈もない。

 ツヴァイは目を瞑った。

「ちっ………クソったれの世界に負けたみてぇなのは………癪だぜ……。」

「なら、出てみないか?」

低い男の声で声を掛けられてツヴァイは背後に振り向く。

ドゴン!

大きな音を立てて牢屋の壁は崩れ落ち、久方ぶりの光が顔を出した。

「ツヴァイ・アムロス。オレ達と共に、世界に一石を投じてみないか?」

光に包まれたイタリア人らしき男は突如として現れて真っ直ぐとツヴァイを見据えた。

その時ツヴァイはなぜだか笑っていた。


 二人は出逢う。

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ソラビト〜SORABITO〜【単話版】 アチャレッド @AchaRed

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