弐の七
その日は珍しくツヴァイはアインツとは一緒におらず、一人で少し遠出をしていた。
いつも帰る時間より遅くなってしまい、走るようにして家路につく。
「あんましおせーとアインツうるせぇからな。」
ツヴァイは右手に持つ小さな袋を握りしめてニヤリと笑った。
こういう少し遅れた時でも頭にあるのはアインツと小さな家族達のことだ。
ツヴァイはどんよりとした雨模様に嫌気がさしながらも走っていた。
誰しも一度は感じた事のある嫌な予感。
だがその殆どは唯の気の所為だろう。
しかし時々、無視できない不思議な感覚に襲われる。
そういう時に人は何かを失ってしまうのかもしれない。
ドォォォォン!
重々しい響きと共に進行方向から黒煙が上がる。
「………あ?」
カジノの為にこの辺の住宅は殆どが立ち退かれている。
残っている施設などツヴァイには一つしか思い当たらなかった。
「待てよ……!」
ツヴァイは思考が完了する前に走り出した。
一人で走っていると余計な考えが頭を駆け巡ってしまう。
あってはならない考えを取り払うように、ツヴァイは走っていった。
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