壱の三

 「ただいま。」

ウノがドアを開けると小気味いい火薬音で祝福された。

「兄さん!昇進おめでとう!」

綺麗な金髪にスラっとしたジーンズ。

スカートを履かないのは兄に対するリスペクトか。

 ドゥーエは満面の笑みでウノに飛びつく。

「おめでとうございます。ウノ様。」

「ありがとう。皆さん。」

ドゥーエに続くようにゾロゾロと使用人達が奥から出てきた。

「ちょっと兄さん!私には感謝しないの?可愛い妹が飛びついてお祝いしてるんだよ?」

プクリと頬を膨らます妹にウノはフッと笑って頭を撫でる。

「感謝してるよ。色々と準備してくれたんだろ?」

小動物のような顔で頭を撫でられるドゥーエは心から安らいでいる。

「もちろん!ほら!こっち来てよ!」

ドゥーエはぐいっとウノの腕を引く。

「ハハハ。オレは逃げないよ。」

腕を引かれてウノもゆっくりドゥーエに続いてく。

 親はいない。だが、背中を任せられる相棒がいる。愛する妹がいる。信頼する使用人達がいる。

これを幸せと言わずなんと言う?

 ウノは幸せを胸に噛みしめる。

これが永遠に続くのだと信じて。

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