壱の二

 今より少し前のこと。ウノの前には重苦しい勲章と地球軍のマークを身に着けた老人達が座っていた。

その中心にウノはいる。

 一人の老人が賞状を持ってウノの前に立った。

「ここより、ウノ・トラファール大佐を数々の功績を称え、ウノ・トラファール准将へと昇格することを認める。いつもありがとう。ウノ准将。」

「ハッ!」

ピシリと敬礼をしてウノは新たな階級証を胸につけた。


 「やったな!ウノ!」

「ありがとうございます。ノーヴェ准将。」

ノーヴェははにかんで笑った。

「今はお前も准将だよ。ったく、どんどこ昇進していきやがってよ。気付いたら並びやがった。」

「いえ、今のオレがあるのはノーヴェ准将のおかげです。階級は同じでもオレにとってノーヴェ准将はずっと尊敬する上司ですよ。」

少し照れながらノーヴェはウノの背中を叩いた。

「ハハハハ!嬉しいこと言うなよ!仕方ねえ今日は奢ってやる!」

190をゆうに超える背丈のウノに少し背伸びして肩を組む。

しかし申し訳無さそうにウノは首を横に振った。

「すみません。今日は妹がお祝いしてくれるようで。」

真面目な顔で真っ直ぐと言うウノにノーヴェは優しく笑う。

「ドゥーエちゃんだっけか。お前らはいーね。兄妹仲良くて。」

何かを思い出したのかフルフルと首を横に振るノーヴェ。

「………准将も奥さんに何かした方がいいですよ。」

「うるせい!まず結婚してから言ってこいや!」

二人は冗談交じりに笑い合う。

 数々の死線を共にくぐり抜けた。

ノーヴェとウノは上司と部下であり、相棒のような関係だった。

父親のいないウノにとっては父親代わりのような存在でもあった。

そして子供のいないノーヴェにとってもそれは同じなのだ。

 「まぁ……俺も久々に家族サービスするわ。お前も妹と仲良く気を付けて過ごせよ。最近オウガ星人が夜中出回ってるらしくて物騒だしな。」

ウノは深々と頷き、頭を上げる。

「はい。折角なので今度奢って下さいね。」

「アホ!俺の財布は長持ちしねーんだよ。」

ヒラヒラと手を振りノーヴェはその場を後にする。

ウノも直ぐに家路についた。

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