零の九

 零は一人で歩いていた。

 二人はあの後東京メトロの6番街を出てすぐに近くにある8番街へと入った。

8番街の人々はボロボロの二人をすぐさま介抱、受け入れ、寝床もくれた。

怒涛の一日の疲れで舞菜はすぐに寝てしまったようだ。

その後零はひとしきり8番街の人間と喋り、決意する。

 舞菜は連れていけない。

零がこれから歩もうとしている道はあまりにも険しく、血みどろだ。

 この8番街には前と違い同年代の人間も多い。

舞菜の性格ならここでもすぐに溶け込めるだろう。

 零は一人で8番街を出た。

大丈夫。あてならある。

「ガーオ。聞こえてるんだろ?」

ガーオはすぐさま反応した。

【まぁ聞こえてはいるがね。常に見張ってる訳じゃない。プライベートは尊重しているよ。】

「そんなことは聞いてない。それよりこないだの話だ。俺は何をすればいい。」

【そうか。待っていたよ。雨霧零。何があったかは敢えて聞くまい。】

零は次の言葉を待った。

【早速だが君に会ってほしい人物がいるんだ。我々と同じ、〈ソラビト〉と呼ばれる者だ。】

「………わかったどこに行けばいい?」

【やはり君は話が早くて助かるよ。イタリアとドイツ。ここに二人の〈ソラビト〉がいる。雨霧零。改めてよろしく頼むよ。】

「ああ。宜しく。ガーオ。」

 独りぼっちの切ない夜。零は一人で歩いていた。

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