夢の国 3

僕と彼女はあの楽園に参加した。空いたテーブルに座るといつのまにかテーブルにはいろいろなものが乗っていた。


コンビニのおにぎり。唐揚げ。牛丼。プリン。チョコレート あの日買った物。



彼女は唐揚げを食べながら話してくれた。


「わたしたちは餌なの」


「餌?」


「そう、どんな存在かはわからないけど食べるの、わたしたちを。妹も食べられたわ」


「相手をみたのか?」


「いいえ、気がついたら彼女がいなくなってた。それから血が落ちてきた」


「さきほど急に人がいなくなったが、食べられたんか」


「そうだと思う。だれも戻って来てなさそうね」


「夢じゃないのか」


「現実よ」


「誰も戦わないのか?」


「誰も・・・・」


「逃げないのか?」


「どこへ?」


「字を読めたら帰れるのか?」


「どうでしょう」


「明日考えましょ。もし生きてたらだけど。とりあえず今日は寝ましょう」

「あぁ、自分の夢だ。自分は死なない」


「だといいけど」


僕は憎らしい彼女の口調に辟易しながら部屋に戻った。


箱に入っていた本はあの頃、はまっていた小説だった。こちらに来てなければ読んでいただろう。


僕はベッドにはいると本を読んだ。




ふっと目が覚めた。まだ夢のなか?・・・・・現実だ。目が覚めた。今日は戦う。必ず戻る。二人のもとへ




箱を開けると僕の服が綺麗になって入っていた。窓から楽園が見える。僕も朝ごはんを食べることにした。


部屋をでるとすぐに彼女も部屋を出てきた。僕の服装を見て眉をひそめたがなにも言わなかった。



「ねぇ、死ぬまで一緒にいましょう」


黙って彼女を見てると


「今、死ぬかもしれない所で生きてるのよ。充実した生よ。ほんとに死ぬまで一緒。文字通りよ」


「死ぬときは選ぶ。二人のもとへ戻る。現実だろうが夢だろうが、俺の物だ。俺は俺の物だ」


「希望を知ってる人はそうやって抗うのね」


「今、死んでもいいように充実してるけどわたしたちは」


「進んで死のうとする人がいるとはね」


「死ぬつもりはない。では行く」


「どこへ?」


「戻る。白い道へ行く」


僕は席を立って歩き出したが、ふと思いついてテーブルまで戻ると、チョコレートをとってポケットにいれた。


僕が歩き出すと、周りの楽しげなざわめきが消えた。不思議そうに僕をみる楽園の住民に見送られて僕は歩いた。


気が付くと白い道を歩いていた。後ろも前も誰もいない。


ふいに足音が聞こえた。


彼女が涼しい顔でいつのまにか横にいた。


「あなたと一緒にいたせいか精神が同調したみたい。ここまで普通に来れたわ」


そういいながら彼女は髪をかきあげた。その青い髪をみてあっと思った。


「待って、止まって」僕は髪飾りをとると彼女の髪を止めた。


「いいの?これあなたを守っているみたいだけど」


「そうかな?じゃ君を守ってもらう」


「ありがとう」


青い彼女の髪にガラスの透明は綺麗だった。意識して女性を見るのは久しぶりだ。


それから二人は黙って歩いた。


白い道はいつしか狭くなった。いつのまにかあの照明が見せる模様のなかに入り込んでいた。


彼女が立ち止まって、苦しげに息を吐いた。


「あと少しだったけど時間切れ。来たわ」


僕も気配を感じていた。大きくて小さくて怖いけど心惹かれる・・・・・身をまかせたいと思った。


だが、僕はそれに向かって火の玉を打てなかった。気持ちは抵抗していたし魔力が集まる感覚はちゃんとある。


だけどなにもできなかった。


その時彼女が僕を突き飛ばした。彼女のくちが歪むとある音をだした。ついで別の音を僕には聞こえない。だけど振動は感じた。なにより彼女が・・・・彼女が血を吐きながら音を・・・・


ふいに彼女の身体が引き裂かれ髪飾りが散った。






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