夢の中 2

僕は彼女の背中の手触りや血の匂いのリアルさに驚いた。僕って夢に才能があるんじゃないの?



やがて落ち着いた彼女と並んで歩くといつのまにか、人の多い場所に着いた。


一言で言うと楽園だった。僕の想像力は、いや記憶力はいい仕事をしている。絵で見た光景だ。


着飾った美男、美女が楽しげに飲んだり食べたりしている。


そこに血のついたドレスの彼女が歩くのだ。シュールだよな。もちろん夢だから皆は背景に徹して彼女になんの注意も払わない。


僕は彼女について彼女の部屋まで行った。


簡素な部屋だった。彼女はシャワーを浴びに行ったのだろう。僕は部屋に残された。僕の夢だけどここは彼女の部屋だから僕はじっと座って外を見た。


あの楽園を上から見ていたら、ある一角の何人かがいきなり消えた。すると楽園が凍りつき全員が静止した。見ている僕も息を止めていたようで、はっと息を吸い込んだ。するとそのタイミングでまた皆が楽しげに動き始め、あの人がいなくなった場所があっという間に埋まった。さっとうしすぎて転ぶ者もでたが、そのごちゃごちゃもすぐに解消して、いまはなにごともなかったかのように皆が笑っている。


自分の想像の産物の異常さにめまいがした。目を覚まそうとさっきから腕をつねったり、頬を打ったりしているが、目が覚めない。



「どうしたの」ふいに話しかけられて僕は飛び上がった。


「あなた、迷い込んだのね。たまにあなたのような人が来るの」


「これは夢だよ。わかるだろ」


「いいえ、現実よ。わたしの妹はわたしの目の前で殺された。今彼女の血を洗い流してきたわ」


「・・・・・」


「あなたここにはどうやって来たの?」


「夢だから寝ちゃった?」


「いいえ、現実。どこから覚えてる?」


「気がついたらあの白い道を・・・・いや、なにやら模様をみていたらそれが歪んで・・・・白い道になった。それから君に出会った」


「模様?なんて書いてあった?」


「字じゃなくて模様」


「書いてみて」


「こんな感じ。同じじゃないけど」


彼女に見せると


「これは字よ。これは適当に書いたから意味がわからないけど字。外へ続く鍵よ」


「あなたの荷物が届いたわ。シャワー浴びて着替えたら」とテーブルに現れたバスケットを示された。


開けてみると服と本が数冊入っていた。


「この部屋のシャワー使ってもいいし、隣のあなたの部屋を使ってもいいわ。隣に行くのね。着替えたら戻って来てなにか食べにいきましょう」



僕は彼女の言うとおりにして、髪を適当に乾かすとなぜかあの男がくれた髪飾りで髪を止めると彼女の元に戻った。

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