第三章

夢の国 1

ここに住み始めてもう一年だ。たまにエドもアレンも王子様として国に帰っている。


そして今、なぜか二人が同時に国に帰っている。つまり俺はあこがれの一人暮らしだ。


朝、だらしなく寝坊をして、買い置きのお菓子を摘んだら街に出かけた。


今日は、半年に一度のねこそぎ市の日だ。前に二人と行ってとても楽しかったから、また出かけるのだ。


一人で行くのもちょっと楽しみだ。



「綺麗な姉ちゃん。これを買いな。もっと美人になるぞ」と綺麗な肩掛けをいきなり肩にかけられたり、「お嬢さん。この髪飾り、安くするぞ」と声をかけられると知らない男がそれを聞いて


「わたしがプレゼントしましょう」と言うなり俺の手を握り、振りほどこうとぶらぶらすると、がっちり肩をだかれた。


そこを店主がすかさず近寄って俺の髪に飾りを付けた。



「似合いますね。お嬢さん。わたしはハロルド・ボルトと申します。このままそこでお茶でも」と歩き出すのに軽い雷をお見舞いすると、跳ね飛んで


「失礼しました。それは収めて下さい」と言うとふらふらしゃがみこんだ。



やばいと思って急いでそこを離れたが、異国の品を置いた店や、めずらしい魔道具の店をついつい見てしまいあちらこちらとふらふら歩いてしまった。


歩きやすくなったなと思うと、人が少なくなっていた。引き返そうとしたその時、


「夜のお部屋が夢の国だよ」の声が耳にはいってきた。よくある照明器具だが、まわりに模様が入ってきた。


幾何学模様だが、ひとつひとつ模様が違う。色も違う。


そのなかのひとつだけがはっきりと見える。ほかはぼーっとしているのにそこだけに焦点が・・・





俺は買ってきた串に刺した肉や、クレープ包みや、蒸した饅頭をテーブルに並べ、ワインを少しグラスに入れた。


そしてあの明かりを灯した。



夢の国だった。ほんとに大げさでなく・・・・


俺はちらちら動く明かりを楽しみながら、美味しく食事をした。眠い・・・ベッドに行かなくちゃ





僕はコンビニの袋を手に白い道を歩いていた。あの日の僕だ。そういえばあの服はお城に置いたままだ。もし残っていたら持って来てもらおう。


白い道はゆるく曲がりながら、続いていた。前も後ろも誰もいない。


僕の夢だから、僕が主演だよねと思いながら歩き続けた。


ふいに悲鳴が聞こえ、血の匂いがした。


道の両側が草むらで、カヤのような草が生えている。そこから白いドレスの女性が走ってきた。


彼女の髪は青く光っていて、白いドレスは血がついていた。




こんな怖い夢を僕がみるだろうか?だが、悲鳴をあげて走っている女性は抱きとめるのが正しいよな。


僕は彼女を抱きとめようとしたが、力およばず一緒に転んだ。夢なのに痛い。


転んだまま、ぎゅっと抱きしめて「よしよしよし」といいながら背中を撫でた。


「チェルシーが、チェルシーが目の前で・・・いきなり上から・・血が・・・」


「もう大丈夫、大丈夫・・・」


僕はゆっくり繰り返した。

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