第42話 A58ダンジョン攻略3



「ここから第二層か」


第一層を突破した僕は、階段を降りた先の第二層の攻略へと挑んでいた。


第二層の通路は第一層と比べてさらに広くなっていた。


天井も十メートル以上というところまで高くなっている。


「ライト」


相変わらず照明スキルは使用しながら、僕は暗い通路の中を進んでいく。


…ちなみになんだけど、第一層から僕をつけまわしている尾行者もいまだについてきている。


本当になんなんだろうね。


まさか第二層に踏みいってもついてくるとは思わなかったよ。


相変わらず僕に気づかれてないと思っているみたいだし。


ダンジョンに踏み入っている以上、おそらく探索者なんだろうけど何が目的なのかいまだに判別がつかない。


敵意は感じないし、実力者でもないみたいだから放っておいてるけど。


いきなり振り向いて「誰だ!」って怒鳴って驚かせてやろうかな。


まぁ、やらないけど。


『ブモォオオオオ…!!』


そんな役体もないことを考えいていると、いきなりダンジョンの通路にモンスターの咆哮が響いた。 


「第二層でいきなりオークか。さすがAランクダンジョンだね」


現れたのはBランクのモンスター、オークだ。


第一層はゴブリンかまたはその上位種しか出てこなかったのに対して、第二層からいきなりBランクのモンスターとの邂逅だ。


さすがAランクダンジョンというべきか。


さらに下層にはもっと強いモンスターが待っているということだろう。


ワクワクしてきた。


『ブモォオオオオ…!!!』


オークが僕を見るなり、鼻息を荒くして突進してくる。


「膝をつけ。グラビティ」


『ブモッ!?』


僕は重力スキルを使って、オークに膝をつかせた。


オークが何倍にも増えた自重に耐えきれなくなり、地面に膝をつく。


「死んでくれ」



僕は立っていられずに地面に首を垂れた状態で動けなくなっているオークの元までゆっくりと近づき、腰の位置にあるその頭部に踵を振り下ろした。


グシャ…!


『モ……』


粉砕音と共にオークの頭蓋が潰れた。 


オークは短い悲鳴と共に絶命した。


「死体を吸収してもらおうか」


倒れた胴体の横でしばらく待っていると、やがてダンジョンによる死体の吸収が始まった。


オークのブヨブヨの胴体が、まるで食べられるようにダンジョンに沈んでいき、手のひらサイズの魔石だけが残された。


「結構大きいね。かなりの値段で売れそうだ」


第一層のゴブリンとは比較にならないほどの大きさの魔石がドロップした。


おそらくこれは探索者センターの換金所に持ち込めばそれなりの値段で買い取ってくれるだろう。


「どんどん行こうか」


僕はオークの魔石を収納し、さらにその奥へと向かって歩みを進める。




僕が第二層のどんどん奥へと向かっていっても、相変わらず第一層からの尾行者は僕についてきていた。


僕はもう気にしないことにした。


何が目的なのかはわからないけど、害がないならどうでもいい。


僕は探索に集中することにしよう。


さっきからモンスターのランクも、そして会敵頻度も上げってきていることだしね。


『ブモォオオオオオ…!』


『ブモォオオオオ…!!』


『モォオオオオオオ!!!!』


そんなことを考えいている僕の元へ、前方からやってきたのは十匹弱のオークの群れだった。


Bランクのモンスターが十匹以上。


群れとしての危険度はAランク相当だろう。


これぞまさに高ランクダンジョンって感じだ。


「手加減なしで行こうか」


『『『ブモォオオオオ…!!』』』


オークたちによる一斉突進。


「スキル……『分身』」


僕は自らの虚像を出現させ、相手を撹乱するスキル『分身』を発動する。 


『ブモォ…!?』


『モ…!?』


『ブモブモ…?』 


オークたちはいきなり幾つにも増えた僕に混乱し、足を止めてしまう。


その間に僕は彼らを殲滅するための準備を整える。 


「スキル……『硬質化』」


『硬質化』スキルを使い、拳と腕、それから脚の強度を格段に跳ね上げる。


このスキルによって、僕の手足は、鉄などの金属よりも頑丈になる。


群れを相手に暴れ回る時にはこのスキルは非常に有用だ。


「行くよ…!」


僕は混乱しているオークの群れの中へ突っ込んでいき、その中で暴れ回る。


「ぉおおおおおおおお!!!」


『『『ブモォオオオオオ!?!?』』』


全方位に対して拳や蹴りをとにかく繰り出す。


高質化した腕や足に、まるで豆腐を割くような感触が伝わってくる。


高質化した状態で暴れ回る僕になすすべなく刈り取られていくオークたちは、一発ごとにその体を削り取られていき、やがて見るも無惨な肉塊へと姿を変えた。


「ふぅ…」


しばらくして僕は動きを止める。


『『『…』』』


沈黙が舞い降りていた。


あれだけいたオークは一匹も残っていなかった。


全て、血みどろの肉塊となって地面にぶちまけられている。


「スキル……『浄化』」


僕は手にべっとりとこびりついたオークたちの血肉と内臓を浄化のスキルで洗浄する。 


やがて肉塊と成り果てたオークたちは、ダンジョンの地面に吸収されていった。


後には、手頃なサイズの魔石がゴロゴロと残されていった。


「大漁大漁」


僕はご機嫌でオークたちの魔石を拾い集め、亜空間へと収納したのだった。


「……(ぇええええええ!?オークの群れをたった一人で……!?信じられません、なんなんですかあの破壊力……!?動きも速すぎても見えなかったし……心配してここまでついてきた私はなんだったのよ……)」




〜あとがき〜


現在新作を公開、連載しています。


無人島でクラス追放された件〜昔蓄えたサバイバル知識で一人でも余裕で生き延びます〜え?毒キノコが見分けられない?罠が作れない?知らねーよ自分たちでなんとかしろ〜


https://kakuyomu.jp/works/16817330650479419653


ぜひこちらの方もよろしくお願います。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る