魔法の鏡

おばあちゃんに貰った魔法の鏡


好きなものを映すと

後で好きな時に見られるの


綺麗な月

可愛いケーキ

お気に入りの絵

欲しいけど買えなかった素敵な服

片想いしてるあの人


同じ電車に乗るだけのあの人と

毎朝すれ違うだけで幸せ


前髪を直すフリをして

こっそり映してしまった出来心


返事がないのは分かってたけど

毎晩鏡の中のあの人に話しかけるの


月の綺麗な夜だった

私はいつものように話しかける


「月が綺麗ですね」

「月なんか綺麗じゃない」


私がびっくりしていると

あの人は意地悪そうに笑った


それから毎晩あの人は話し続けた


「君は可愛くない」

「見ないで欲しい」

「会いたくない」

「君が嫌いだ」


私は悲しくていつも乗る電車の時間を変えた

鏡の中のあの人は喜んでいる


「君がいなくてせいせいする」


悲しいのに毎晩あの人を見るのをやめられない

どうしようもない恋心


そしたらある日

駅で落し物をして困っていたら

あの人が話しかけてきた


「いつも同じ電車に乗ってたよね」

「……はい」

「落し物?探すの手伝うよ」


現実のあの人は優しく微笑んだ

優しくて悲しい

本当は私を嫌っているのに親切なのね

嬉しくて悲しい


家で泣いてたら

理由を聞いたおばあちゃんが言ったの


「鏡は反転するのよ」って



◇◇◇◇◇



アマノジャクを書いてみたかった

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