知る由もない

「やってられるか!!」


ドロシーは腹立ち紛れに赤毛を掻きむしった。


普段は規律を重んじる彼女が所属する騎士団の新上官に楯突いたのは正義感ゆえ。

家名とコネだけの実力もないその男は、上にへつらい部下をいびる典型的な卑怯者だった。


更には諫言かんげんした彼女を厭らしく誘ってきたので思わず殴り飛ばした結果。

僻地へ左遷され、部下と共に宿舎ごと竜巻で飛ばされ今に至る。


「隊長、ここどこですか?」


情けない顔で尋ねる金髪の男は、部下の一人、リオン。図体はデカいが小心者である。


「分からん」

「そんな」

「他の者は無事か?」

「ふぁい、ここにいますよぉ」


瓦礫の中から顔を出したのは従騎士エクスワイアのクロウ。

柔らかな藁色の髪同様、何かと覚束ない少年だ。


その後ろから、銀の甲冑に身を包んだ長身の男がぬっと現れる。

普段から寡黙で人前では決して甲冑を脱がない男の名はテイン。


「ドロシー様!」

「トト!無事で良かった!」


彼女が弟のように可愛がっている従者のトトが駆けてくる。

ドロシーは腕を組み、周囲をぐるりと見渡した。


「さて、これからどうするか……」


この後、数多の困難を乗越え悪い魔女を倒し碧玉エメラルドの都で賢者と出会う冒険譚の始まりになるとは、まだ誰も知る由もなかった。



◇◇◇◇◇



「知る由もない」って使ってみたかっただけ。


オズの魔法使い風味。

女騎士ドロシー隊長(Dorothy)

従者トト(Toto)

臆病リオン(Lion)

従騎士クロウ(Scarecrow)

甲冑男テイン(Tinplate)


イラスト描いてみました(すみません、しょうもないです)

▼▼▼

https://kakuyomu.jp/users/toriokan/news/16817330649274269331

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