リベラと君のパーカーの紐

私は何事もきっちりしたい性質である


掃除は部屋の隅々までピカピカに磨きたいし

本棚の本は一巻から背の順に並べたい


棚や額縁の傾斜も気になるので

愛用の水準器リベラを利用して水平を保っている


そしてパーカーの紐は左右均等に伸ばしておきたい

均一、均等、左右対称シンメトリーこそが私の愛するもの


「教授~、この本ここら辺に戻しておけばいいですか~?」

「待て、その本はこっちだ。ちゃんと一巻から揃えてあるだろう」

「とりあえずまとめとけば良くないですか~?」


「水準器は丁寧に扱ってくれ、壊れたら困る」

「はいは〜い」

「返事は短く一回で」


助手として雇った彼女は一事が万事この調子

全くもってイライラする


左右非対称アシンメトリーに切った前髪

四角い部屋も丸く掃く

オーバーサイズのパーカーの紐は

いつもどちらかがだらしなく伸びている


毎日それを見るたびにイライラして

彼女のパーカーの紐を左右均等にするのが私の日課になった


「君はパーカーばかり着ているな」

「あら、だって、これを着てれば貴方が気にかけてくれるでしょう?」


今日も妻はパーカーの紐を片方だけ伸ばして

私の水準器を磨くのだ



◇◇◇◇◇



ラジオで聞いたパーカーの紐を左右対称にしたい人の話を盛ってみた

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