そして彼女はまだ空いていた俺の隣の席に座った。俺の視線の端で長い髪がふわっと舞って、ほのかにシャンプーの良い匂いがした。反射的に匂いのするほうを向いたら、デカいおっぱいがちょうど視線の高さにあってね、ははは、彼女が座ると同時にばっちり目が合っちゃってさ。そしたら、彼女は軽く会釈しながらにっこり笑って「こんばんは」って言ったんだよ。さっき話した通り、彼女は恐ろしくいい女だった。そんないい女が今初めて会った自分にそんな風に挨拶してくるんだよ、それもムラムラムラムラしてどうしょうもないときに。俺の気持ちわかるだろ?もうその瞬間から俺の頭の中は彼女でいっぱいだったよ、ははは。

でも俺はなるべく平静を装って、彼女がしたのと同じようににっこり笑って挨拶を返した。そして彼女が頼んだカクテルがテーブルに並んだタイミングで、彼女に向かって「お疲れ様でーす」って言ってこう、グラスを持ち上げて乾杯を促してみた。彼女はまたにっこり笑って、同じ言葉と同じ仕草で乾杯に応じてくれた。で、「俺、この店に来たの初めてなんだけど、よく来るんですか?」って訊いたら、可愛らしい声で「わたしも初めてなんです~。さっきまで友達と飲んでいたんですけど、いつの間にかはぐれちゃって、連絡もつかなくて~」って言うからさ、「え、じゃあ俺とまったく一緒じゃん」っなってね。で、さっき話した経緯を、ハプバーのくだりだけぼかして面白おかしく話したらさ、「え~、偶然ですね~」って…えーと、これ一から十まで再現するのは大変だな、声真似はしなくていい?ははは――ん?えー嘘、冗談のつもりだったんだけど……詳細にって言われてもな、全部再現するのは流石に無理だわ、細かいところまで思い出せないしな、ははは。まあそんな感じで会話が始まったんだよ。こっちからなにか話せば、ちゃんとキャッチボールを続けやすいような返答が常に返ってきてさ。でもね、ただ相手するのが上手いとか愛想がいいとかって感じじゃなくてさ、ごく自然なんだよ、話し方も笑顔も。それなりに場馴れはしてる感じではではあったけど、いかにも水商売的なプロっぽい印象は感じなかった。

そんなだったから、いい感じに話が盛り上がった。はじめのうちはさ、彼女を挟んで反対側の席にいた男も彼女の方をわかりやすくちらちら見ていたんだけど、俺と話し込んでいるから割り込めない様子でね。俺がトイレに行っているあいだにそいつらのうちの一人が彼女に話しかけてた様子だったんだけど、俺が戻ってきたら彼女が「おかえり~」なんて言っちゃって、何事もなかったかのように俺と話の続きを始めるものだから、もうその後は話に入ろうともしてこなかったよ。そのときの俺の優越感ったらないね、ははは。

でもさ、後で考えてみると、どこに住んでいるとか、なんの仕事をしてるとか、そういう自分自身のことについては彼女は話してなかったんだよね。気づかれないように上手く逸らしていた感じがするよ、後で考えてみるとね。少しくらい何か話していたかもしれないけれど、でも覚えていない。俺、女に関することだけは記憶力が良いんだけどさ、ははは、それでもなぜか思い出せないんだ。まあ酔ってたってのもあるしな。だからさっきも言ったとおり、彼女のことは何もわからないんだよ。

まあとにかくそんな感じでひとしきり話が盛り上がってたんだけど、そろそろ終電って時間になって客がぽつぽつ帰り始めて、店の中がだんだん静かになってきてね。俺は、彼女も帰っちゃうのかな、帰って欲しくないな、なにを言えば引き留められるかな、なんて考えながら会話が途切れないように頑張って喋っていたんだけど、段々と話題もなくなってきてさ、終いには俺も彼女も黙ってしまった。最悪の展開だよね、ははは。

でもさ、俺が心の中で“まあ今日はダメだよなあ、連絡先聞いておいたらまた会えるかなあ”って思ってたそのときだよ、彼女が「まだ帰りたくないな~」なんてわざとらしく呟いたんだ。そんなこと言われたら・・・・・・こっちだってその気になっちゃうじゃん?俺は「じゃあ次に行こうか」って言って、二人揃って店を出ることにした。彼女、「財布を家に忘れてきちゃった」って言っててさ、一万円くらいはポケットに入っているから大丈夫とも言ってたんだけど、もちろんそこは俺が払う場面じゃん?だから彼女の分の会計も支払いながら、俺は頭の中でもう一軒飲みに行くべきか、家飲みを口実に連れ込むべきかをずっと考えていたよ、ははは。

で、店の外に出た途端だよ、彼女がちょっと酔った感じでふらついて、こう、腕を組んでくるわけ。もちろん彼女のでかいおっぱいが当たるじゃん?俺はもうその気になっちゃってさ、通りに人があまりいないタイミングで彼女の顔を覗き込んだら、彼女がちょっと照れたような顔で唇を突き出してきてさ、そのまま軽くキスをした。その反応を見て、ちゃんと向こうも気があることを確認できたらもう俺は止まらなくなってさ、ははは、彼女の柔らかい唇の隙間に舌を入れて、道端で軽くベロチューしちゃってさ。あの辺には飲み友達も多いんだけど、誰かに見られてたらどうしようとかそんなことはもう考えられなかった。頭のてっぺんからつま先までその女とのセックスのことしか考えられなかった。真面目なあんただってわかるだろ?そういう気持ちはさ・・・・・・あ、へえ、わかるんだ・・・・・・うそうそ、冗談だよ、ははは。

で、「俺この近くに住んでるんだけど、よかったらうちで飲む?」って聞いたら、彼女がまたにっこりしながら頷いてくれてさ。でもそれまでと何かが違う、妙にエロティックな笑顔で、俺はドキッとしたよ。途中でコンビニに立ち寄って、缶チューハイやビールと、彼女に気付かれないようにこっそりコンドームも買ってさ、薄さ0.01ミリのやつね、ははは、片手にビニール袋を持って、もう片方の手は彼女と腕を組んでさ、二人で仲良く俺ん家に向かった。俺は有頂天だったよ――でも一瞬ね、“こんなにいいことがあったら、反動で後から何かとんでもないことが起きるんじゃないか”って不安になったのを憶えている。結果的にその不安は正しかったんだけど、あのときの俺には後に起こることなんて知る由もなかったし、警告されたとしても聞く耳を持たなかっただろうね。あまりに非現実的な話だもの。それになにより、もうセックスのことで頭がいっぱいだったしね、ははは。

俺ん家に着いて玄関に荷物を置くなり、俺らはどちらからともなく暗い部屋の中で貪り合うようにキスをした。二人とも我慢の限界って感じでさ、ビールを冷蔵庫に入れることもシャワーを浴びることもなく、そのまま寝室に真っ直ぐ向かって、ベッドの上に雪崩れこんだ。こう、彼女の上にのしかかって首筋に唇を当てて、胸を揉みしだきながらジャケットとブラウスとスカートを順番に脱がして、俺も服を脱いで、お互いが下着姿になったところで、彼女の背中に手を回してブラジャーのホックを外した。その綺麗なおっぱいについた大き過ぎない乳首にむしゃぶりつきながら、先ずは彼女のパンツを降ろして、次に自分のパンツを降ろして、とうとう二人とも裸になった。

彼女の乳首を左手で弄りながら、右手で股に触れたら、もうびしょびしょに濡れていてさ、そのまま中指と薬指を彼女の中に入れて、内側を指先で掻き回して――ええ?あんたが言ったんだろ、できるだけ「詳しく話せ」って。なに?興奮してきちゃった?ははは、冗談だよ、そんな怖い顔しなさんなって。まあとりあえず聞けよ――でね、右手の動きを激しくすると、ぴちゃぴちゃって音が部屋に響いて、それが彼女の喘ぎ声と混ざりあってとにかく卑猥なんだよ。その後手がちょっと疲れてきて股間に顔を埋めてアソコを舐めたんだけど、これまた卑猥な匂いがしてさ。ははは。臭くはないんだ、ただただ男の情欲を掻き立てるような、そんな匂いだった。でもクンニし始めて一分も経たないうちに彼女が「もう挿れて欲しい」って言うんだよ。もしかしたら俺の舐め方が下手だったのかもしれないけど――でもおねだりされてる感じで興奮したな、ははは――ゴムも付けずに彼女の中にペニスを突っ込んで、それからパンパンパンパン猿みたいに腰を振ったよ。ああ、こんな話をしていたら勃ってきちゃった、ほら。あ、見せなくていい?ははは。

彼女はアソコの具合も最高でさ、しかも生だから、そりゃもうヤバかったよね。一回目はすぐイッちゃって思いっきり中に出しちゃってさ。でも彼女は全然怒らないんだよ。それどころか、繋がったまま俺の首に腕を回して、耳元で「次は一緒にイこ?」って囁いてきてさ。それ聞いた途端、俺は彼女の中でまたバキバキに勃っちまったよ、ははは・・・・・そんな風になるのは久しぶりだったよ。もうなんだかんだいい歳だし、酒も入っているから普段はそんなに元気じゃないんだ。インターバルが必要になる。それなのにあの夜は凄かった。本当に最高のセックスだったんだよ――彼女が「首を絞めて欲しい」って言い出すまでは。

最初は俺のほうが絞められた。彼女が上に跨って動いていたとき――多分責めるのがわりと好きな子だったんだろうね、ははは――積極的に乳首を弄ったり耳を舐めたりしてきたんだけど、途中から細い指で俺の首筋を撫でつつ、さも自然に両手を俺の首に掛けてきてさ。俺は“ああ、意外とこういうのがお好きなのね”なんて頭の中で思いながら、彼女のなすがままに絞められた。あんたは首絞めセックスってやったことある?・・・・・・「知識としては知っている」ね、なるほど。お堅い刑事さんらしい回答だな、ははは。でも実体験はまだなんだろ?今度彼女にでもやらせてもらいなよ。なんでも一度は経験してみるもんだぜ、ははは。絞めるときにちょっとこう、サディズムをくすぐられるんだろうな、興奮するんだよ。ははは。まあそう言いつつ俺も絞められる側は苦手なんだけど、彼女の場合は首絞め関係なく上に跨って腰を振られているだけで凄い気持ち良かったからさ、ははは、俺はまたすぐイッちゃいそうになっていた。でも、寸前で彼女がぱっと手を離して覆いかぶさってきて――耳元で荒れた息遣いを少し整えてから言ったんだよ、「今度は、あなたが絞めて」って。

俺は彼女を抱えてゆっくり体勢を入れ替えて、今度は俺が上になって腰を振りながら彼女の華奢な首に手を掛けた。アレにはちょっとしたコツがあってさ、こう、人差し指とその付け根で、気道を避けて頸動脈だけを圧迫するんだ。俺は彼女が本当に窒息してしまわないようにちゃんと注意を払っていた――そう、ちゃんとやっていた筈なんだよ。

でも暫く絞めてから手を緩めると、彼女は「もっと強く絞めて」って言うんだ。だから俺は言われた通り少し強めに圧迫した。でも彼女は満足してくれない。緩める度に掠れた声で「もっとっ」「強くっ」ってさ、ははは。そう言われて更に強めに絞めてみても、また「もっと」って――幾ら強くしても彼女は「もっと強く」って言うだけで満足してくれないんだよ。俺は内心ではちょっと困惑していたんだけど、女の虚ろな目になっていく目が異常なくらい興奮を誘ってさ、段々とハイになってきちゃってね、自分でもわけがわからなくなってきたんだ。頭が回らなくなって、目の前が真っ白になって――逆に俺が彼女に首を絞められているような気分だったよ――終いには、彼女の首を無造作に鷲掴みにしてぎゅっと締め上げながら乱暴に腰を打ちつけていた。

どのくらいの時間そうしていたんだろう・・・・・・射精した瞬間に我に返ったら、彼女は目を見開いたまま、ぴくりとも動かなくなっていた。

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