二番星

☆13 バレンタインデー(紫苑&柚子)

 修学旅行の班も無事決まり、二月に入った。

 二月のイベントと言えば、そうバレンタインデーだ。

 女の子たちはチョコを渡しあい、男の子たちはもらえるかもとソワソワする日。

 彼らはどう過ごすのか。



  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 2-1の教室にて。

「なあ、今日バレンタインデーだろ?新汰はもらう予定ないのか?」

「ないよ。あるわけないだろ。友達すらお前らしかいないのに」

「冬島さんは?」

「そんなものもらえるような関係にまだなってないって。それこそ、紫苑には立花さんがいるだろ」

柚子ゆずは毎年もらってるけど、幼馴染の義理だろうからノーカン。俺は本命が欲しいの」


 今までとは違った一日だ。

 教室の隅っこの席で一人知らんぷりして過ごしていた。

 他の男子がソワソワしてるときも『お前もらったのかよ!いいなー』とか言ってるときも俺は一人でいた。でも、今年は違った。紫苑がいる。

 紫苑が朝から話しかけてくることはいつもならちょっとウザいけど、今は少し楽しかった。

 紫苑とバカなバレンタインデー話をしゃべっていると立花さんが俺らの教室にきた。

 立花さんはちょっと怒っているような気がした。

「お・は・よ・う」

「あー、おはよー」

 紫苑はテキトーに立花さんの挨拶を返す。

「どうしたの?立花さん」

 俺はとりあえず話を進めるために訊いた。

「ちょっと、作りすぎたからあげようと思って。ほら、これ甘乃の分」

 そう言って立花さんは俺にチョコをくれた。人生初の女子からのチョコだ。

「あと、これはバカ紫苑の分。ついでにあげる」

 ついでだと言って紫苑に立花さんは頬を赤くして紫苑に渡した。

「ついでってお前、ともだt……。サンキュー!柚子」

 さすがにやばいと思ったのか紫苑は苦笑いしてすぐ誤魔化した。

 でも、それは手遅れで。

「いるもん!バカ紫苑のバカ!」

 と言って、俺たちの教室を飛び出て自分の教室へ帰ってしまった。

 お礼をまだ言っていないことに後から気づいた。



  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★


 バレンタインデー前日。立花家。

「何嬉しそうにしてるの?柚子?」

「何って明日バレンタインデーだから準備してるの」

「そっかー。じゃあ、相手は紫苑くんかなー」

「茶化さないでよ。ママ」

 照れながらも否定しない柚子。

 我が娘はとてもかわいい。

 なんといっても私の子だからね。

 娘は幼馴染で隣の家の子の紫苑くんに恋してる。

 家では紫苑くんに文句を言いながらも愛のある言い方をいつもしている。

 口を開けば紫苑くんの話。『紫苑が紫苑が』っていつもいつも話してくれるの。

 紫苑くんの方もいつもイヤイヤ言ってるけど、私の見立てでは満更でもなさそう。

 まさに、ツンデレカップル。



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