★12 班確定

 紫苑しおんと立花さんの喧嘩の件をどう解決するかこれがかなりの難解な問題で最低でも解かなくてはならない。

 仲直りできることが一番いいし、目標である。紫苑がどこのラインまでなら妥協できるかその見極めが重要になってくる。

 今のところ紫苑の主張はいつも一緒にいる立花さんと一生の思い出の修学旅行に行きたくない。他の友達と遊ぶ思い出がほしいし、この修学旅行くらい立花さんと離れたい。

 離れることでもしかしたらその大切さに紫苑も気づくかもしれないけど、俺はやっぱり仲のいい二人と一緒に行きたい。もちろん冬島さんとも。



  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 俺は紫苑に連絡を取った。

【なあ、奢るからちょっと付き合ってくれん?】

 するとすぐに返信が返ってきた。

【わかった。じゃあ、いつもの集合場所で】

 集合場所というのは前に初詣に行ったときにも集合した場所だ。

 というか思ったよりすんなりいったな。もっと、ごねて無理やり駆り出すことになるかと思ったのに。

 晴れているのにまだまだ寒い天気。手を出しているとどんどん冷たくなっていく。春はもう少し先のようだ。そんなことを考え例の集合場所に着く。ここにちゃんと目的を持ってきたのは一か月ぶりだ。帰り道に通ることもあるが集合場所として使うのは初詣以来。住宅に囲まれたただただ何もないただの空き地。そこが俺と紫苑と立花さんとの集合場所だ。

「おーす。新汰あらた

 俺が着いたときにはすでに紫苑はいた。

「とりあえず、行こうぜ。奢ってくれるんだろ?」

 俺は頷いた。そうやって誘ったのは俺だから別にいいんだけど、なんかそんな感じで来られるとちょっと財布が心配になる。



 来たのは有名ハンバーガーチェーン店。ここでいいのか感が多少ある。

 二人とも注文をして席で待っていた。

 店員が来るまでは最近のゲームの話やら愚痴やらなんやら雑談をしていた。

 俺はポテトとドリンクで紫苑はハンバーガーのセットを三つ注文してた。

 店員さんが注文の品を持ってきたところで雑談は終了し、一気に本題へ入った。

「んで?どうせ俺を班に連れ戻そうって話なんだろ?」

 隠す必要なんてない。その通りだと俺は頷いた。

「だと思った。柚子ゆずと修学旅行まで一緒なのはもちろん嫌だが条件がある。その条件を満たせば、戻ってやる」

「なんで、上から目線なんだよ。紫苑のうざさが周りに目立つ」

「そりゃ、お前は俺に同じ班になりたいとお願いに来てる立場だから俺の方が立場上だし」

「それで、条件って?」

「えりかさんに会わせろ」

「え?でも向こうだって仕事…」

「今日、日曜だからな。さすがにねえだろって思った」

 俺は冬島さんに連絡した。

【今日空いてる?紫苑がえりかさんに会いたいって言ってて】

 すると、すぐに返信がきた。

【大丈夫だよ。ただ、おねえちゃん夜から仕事行っちゃうんだよね】

 それからしばらく、紫苑を放置して冬島さんと時間をすり合わせた。

「で、えりかさんに会いたいって理由あんの?」

 ずっと放置してた紫苑に話を振った。

「気になるからに決まってんだろ。そして、これを条件にしたのは未来の義妹の評価を上げること」

「いや、この前のでマイナスだからプラスになっても良くてゼロだろ」



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 約束の時間に冬島家に着いた俺たち二人。道中で冬島家に上がるときのルールを徹底的に頭に入れさせた。インターフォンを鳴らし出たのはえりかさんだった。どうぞと言われ固まる紫苑。引きずって中へ入れた。そこからずっと機械人形のようにぎこちなく動く紫苑だった。

 冬島さんとも話した。

 紫苑の出した条件を満たしたことで班員になることを了承したこと。

 ハンバーガーチェーン店にいたときに立花さんに対して謝罪することを約束させたこと。

 冬島さんの出した条件もある程度達成できたことで班員になるという許可を取りに来たこと。

 その他にもいろいろ、例えばそもそも同じ班になる人たちはどんな人なのか。

 本当にいろいろ話した。

 えりかさんが仕事に行く準備をするということでお開きにして紫苑と出た。紫苑はまともな姿勢を維持できず、家まで送ることになってしまった。


  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 翌朝、ちゃんと紫苑が立花さんに謝罪するところを二人で見届け、その後四人揃って職員室へ向かった。

 班員の名前を記した紙を提出するために。班長は俺になってしまった。紫苑と立花さんに押し付けられた感が強かった。泣く泣く自分の名前を班長の欄に書いた。

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