★14 バレンタインデー(唯誓&英姫)

 冬島家、早朝。

唯誓いちか、何作ってるの?」

 唯誓の姉である英姫えりかはキッチンに立つ妹に訊いた。

 朝ご飯を作っていることもあり得るがそれにしては早すぎる時間と甘い匂いがしていた。

「んー?これはね。バレンタインデーのチョコだよ」

「お姉ちゃんの分ある?」

「もちろん!」

 妹は笑顔でそう言った。

 これはかなり嬉しい。

 なんせ最愛の妹がバレンタインデーにチョコをくれるのだから。

「それでそれで、そっちのは誰のかな?唯誓ちゃん?」

「内緒!」

 かわいい顔して実の姉にも隠すなんて、唯誓はかわいい以外何者でもないな。

「またまた~。新汰くんのなんでしょ。本命かーいいなー」

 後半のところを棒読み風に言って唯誓を見る。

「ちょっと!勝手に想像しないでよ……」

 我が妹は耳が赤くなるほど照れていた。

「何その反応~図星かな?いいな~新汰くんいいな~」

「もう!お姉ちゃんの馬鹿」

 そう言いつつも優しくてかわいいのがうちの妹なんです。

「で?もう二個あるけど、そっちは?」

 純粋に気になったので唯誓に訊いてみた。

「これは、今度の修学旅行で同じ班になった子二人にあげようかなって」

「修学旅行の班ってこの前家に来た紫苑って子と……?」

「立花柚子ゆずちゃんだよ。隣のクラスなんだけど、かわいいんだよ」

「唯誓、女の子の友達も出来たんだ!」

 転校してきてはや一か月。学校に馴染んでるみたいで姉としては喜ばしい。

「妹を勝手に男たらしみたいに言わないでよっ!」

「そうだね~。唯誓は一途だもんね~」

「もうっ!お姉ちゃんここから出て行って!」

「はいはい。言われなくても、お仕事言ってきますよ~」

 私は仕事場に向かうために玄関の方へ行った。

「気を付けてねー」

 妹はキッチンから私に手を振って見送ってくれた。

 ちょっと怒りつつも心配もちゃんとできるいい子だ。

 やはり、新汰くんに嫉妬してしまう。

 私は門を開けた。

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