第26話 素直な気持ち

 わたしの心の声は竜王様に筒抜けだ。

 どうせこれからわたしが考えることも、竜王様にはスケスケ状態。


 でも、だからこそ、わたしは言葉を吐き出す。


 

 ◆



 わたしは、竜王様を信じてる。知識と力をくれて、の願いを叶える手伝いもしてくれて、とても返しきれない恩がある。


 今でも竜王様と同じように人族は大嫌いだし、滅ぶべきだっていう考えも変わってない。


 でも、わたしは本当に正義なの? 


 ずっと胸につっかえてる。竜王様は、悪いのは人族でわたしたちは正義だって言ってた。


 人族が悪いのは、事実だと思う。


 どんな理由があっても、他種族を侵略するなんて許してはいけないこと。


 ——なら、わたしはどうなるの? 


 お母さんの願いで人族がいない平和な世界を作って、他種族を救うためにわたしは人族を倒してる。


 これも所詮一つの理由だ。本当にわたしのやってることは正しいの? 許されることなの? お母さんは、こんな願いをわたしに託したの?


 お母さんが倒された時のことを思い出そうとすると、頭にモヤがかかったみたいになる。

 だから、分からないままだ。分からないから、竜王様に頼ってしまう。


 過去にあった地獄を思い出したくないから、無意識のうちに自分で蓋をしてるのかもしれない。


 それとも、竜王様が——


 違う、それは考えちゃダメなことだ。わたしは竜王様を信じなくちゃいけない。


 きっと、全てに意味があるんだと。わたしに何か隠してても、それは必要なことなんだと。

 

 ————でも、それでも、やっぱりわたしは知りたい。


 全てを知ることができる日が来ることを、わたしはずっと願ってる。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る