第24話 獣族

 刺して、斬って、燃やして、氷漬けにして、貫いて、噛みちぎって、殴って、蹴って、薙ぎ払って、押し潰して——


 あぁ——簡単に、同じように、作業のように繰り返す。


 

 ◆


 

 【焦滅アオスブルフ】でアルティナ共和国の都市を一つ消し炭にしてからもう半日ぐらい経つ。


 現在までに滅ぼしたアルティナ共和国の都市の数は四つ。魔力の消費が激しすぎるからって【焦滅アオスブルフ】は使わせてもらえず、半日で三つの都市をただの【竜炎りゅうえん】で燃やした。


 そして現在進行形で人族を倒してるこの都市も、もうすぐその数に加わる。


 竜気によって形作った翼で空に浮かびながら見下ろせば、整備された道に転がる倒された人族が見える。人族が建てた家や店などの建造物も、わたしの攻撃で半壊してる。


 奥の方には「助けて!」と大声を出しながら逃げる人族の姿と、大きく揺らいでる魔力が見える。


 ——苦痛だった。


 【焦滅アオスブルフ】を放って以降、竜王様は都市の侵略をわたしに任せてくれているけど、都市にいる人族があまりにも弱すぎる。


 ザイテン王国の時にわたしを苦戦させた強い魔法士や、竜王様が倒した強い王様のような人族がいない。


 戦いっていうには緊迫感がなくて一方的すぎる。戦闘のこと以外を考える余裕があるせいで、頭が勝手に余計なことを考えてしまう。


 そのせいでいらない感情が、思考が纏わりついてきて心が揺らいでしまいそうだ。


 それでも竜王様がわたしに任せてくれた以上、頼ることは出来ない。期待に応えないと。




「はぁぁぁぁ……」


 ため息がでる。


 わたしに対抗してくる兵士がみんな弱すぎるのは、アルティナ共和国が小国だっていうことと、攻めてるのが首都じゃないせいなのかな?


 ——あぁ、ダメだ。また考えなくていいことを考えちゃってる。

 

 わたしは気持ちを切り替えて人族に意識を向て【竜炎】を左手に軽く纏める。


 後は簡単。逃げてる人族を上空から狙い定めて——それを発射する。


 纏められた【竜炎】は光線となり、直線を描いて大声を出しながら走る沢山の人族を捉える。


 後はいつもと同じ。一瞬光が目の前を覆い、次に音と風が体を伝う。それらが終われば、そこに人族はいない。着弾点付近の建物と道は燃えたり、吹き飛んだりしてる。


 これを何度か繰り返せば、人族を見つける方が難しくなるため、効率を考えて次の都市に向かう。


 現在攻めてる都市もあと一、二回これを行えば次へと向かうことになりそうだ。


「ふぅぅぅぅ」


 息をゆっくりと吐き、頭の中を空っぽにしてまた左手に【竜炎】を——

 

「何、この魔力? 人族じゃ……ない」


 反射的に魔法の構築を止める。その魔力を探知した場所へと即座に目線を落とす。


 そこにいたのは——


「なん……で?」


 燃え盛る建物に囲まれて、ひび割れた地面の上にポツリと立つだった。

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