5.幸せのルート

 1年も2年も順位としては2位だった。

 

 バイトもしていたし、まだ苦手な分野もあった。

 

 本格的に本気になって勉強をした。

 

 自分の立てた目標にはきちんと今まで結果を出してきた。

 大きすぎる目標だとも思わない。


 達成できることであるはずだ。


 本気を出して勉強したかいあって首席で卒業することができた。

 ゼミにも、論文作成も難なくこなせた。

 

 今までの勉強のおかげか半年ほどで完成してしまったから、

 就活に専念できた。

 

 無事に薬剤師の資格を取れた。


 そして企業にもすんなり内定をとれた。

 苦労する人も多い中、恵まれているなとも思う。


 ☆☆☆


 社会人になってしばらくは職場になれるのが大変だった。

 いくら将来を見据えて努力してきたといっても、


 現場の速さを求められるのはつらいものがある。


 この企業最速で店舗の最高責任者になった。


 社会人でも努力の仕方が合っているようだ。

 

 年上の同僚に勧められて、説得のようなものをされた。


「結婚して守るものがあると、また人生違って見えるぞ」 

 

 守るものが必要だといわれたって、家庭を持つのはリスクだ。

 

 こんなドライな考えを持つ俺を許容してくれる人なんているだろうか。


 ゼミの仲間を思い出し、SNSで連絡を取ってみる。


「わかります。さみしいけれど。

 自分以外の人を信頼するのが怖いというか、

 責任ってありますよね」 


 分かると言ってくれ人がいるが、恋愛こそ最大のトラップ。

 

 思考を鈍らせる麻薬のようなもの。


 身を任せてみるのもいいかもしれない。

  

「付き合ってみせんか」

「ぜひ。こんな論理的で効率重視の女でよければ」

 お互い薬剤師だからまったく時間は合わない。

 月1会えればいい。

 その考え方に同意しつつも、もう少し会いたいということで、同棲を始めた。


 家庭のあり方を観察してこの人なら任せられそうだという人に、


 任せることにした。


 毎日、仕事から帰ってきても家の中がどこかほんわかしている。

 何よりおいしい料理が食べれることが最高にいい。

 

 そのかわりに洗い物は俺の役目だ。

 彼女の指先が荒れるようなことをさせたくはない。

 

 こんなに自分が家事を率先してやるようになるとは思わなかったし、

 他人をいとおしいと思えるようになるとも

 思わなかった。

 人生で一番の誤算は恋をしたことだろうか。

 でもまぁ、悪くない。


「おかえりなさい」


 この解は正解のようだ。

 心地よく、暖かい。


 身体が動く限り、仕事は続けたい。


 これからも俺は解を間違えない。

 QED

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人生のルート、正しいかを証明しなさい 完 朝香るか @kouhi-sairin

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