3-3 モデルの世界へ

「『Pal Blue』はウチの経営するお店でね? その専属モデルがユウって訳」

「はぁ」



 まぁ、それならPal Blueでの七原の態度も理解出来る。店員にもご苦労様って言ってたし、社長令嬢ならあんな態度にもなる。

 それで、綺麗でモデルというのも理解は出来る。出来るんだがーー



「何で俺がマネージャーなんだ?」

「私も聞きたかったんだけど……」



 俺が呟くと、それに高梨さんも七原に視線を送った。七原は少し頰を染めながら、恥ずかしそうに答えた。



「えっと……九条さんにはもう何もかも見られたので……私の恥ずかしい所とかも……全部♡」

「は、恥ずかしい所!!? どういう事!!?」



 待て待て待て待て待てっ!! それだと誤解が生じるだろ!? いや、正直見たと言えば見たが……



「ち、違います! 七原が言いたいのは弱気になっている所を、恥ずかしい所だと言いたいんだと思います!!」

「あ……そっか。まぁ、そうよね。あの時のユウを助けたのは貴方なんだものね」



 社長令嬢、しかも新進気鋭のモデル事務所のエースの✖︎✖︎✖︎✖︎姿を見た上に? 拘束してお漏らしをさせたと……こんな事がバレたら死ぬ。社会的にも死ぬ。



「ま、まぁ? でも、助けたってだけで俺なんかがマネージャーなんてやっていいのかなぁって思ったりはするんですけど…それに俺、モデル事務所のマネージャーなんてやった事ないですし」



 俺はそもそも此処に事務作業の仕事をしようとしてたんだ。マネージャーの仕事なんて出来る訳がない。



「……ハッキリ言えば、これは九条君に私も賛成なんだけど何で? あの動画流したのもアイツなんでしょ? 今度は女性のマネージャーにしようと思ってたんだけど……」

「いや! 私は九条さんが良い!」



 そこで七原が叫んだ。高梨さんも驚いて目を見開いている。


 何故そこまで俺をマネージャーにしたいんだ? それにーー



「アイツって?」

「前のマネージャーよ」



 っ!! 前のマネージャー!? 前のマネージャーが七原の動画をSNSに流したのか!? と言う事はそいつは元カレって事か!? 良いのかそれって事務所的に!?



「あっ…なっ…」

「良いんです。それを含めて私は九条さんが良いんです」



 何でそこまで……



「はぁ…分かったわ。ここまでユウがお願いした事なんて無かったし」



 そう言うと高梨さんは立ち上がった。



「ま、待って下さい! 」

「仕事は探してる所なんでしょ? 丁度良いじゃない」

「そう言う事じゃないですよ! 俺マネージャーなんて…」

「取り敢えずユウのお世話をする役目ってだけ。月謝は事務作業員の時の倍出すわ。頑張って!」

「2倍……お、お世話」

「よろしくお願いします。九条さん♡」



 これから俺の生活はどうなるんだ…。


 俺は擦り寄ってくる七原を気にする事もなく、思わず天井を仰ぐのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る