2023年  4月

エンジェルフライト 国際霊柩送還士・第1シーズン(ドラマ)

 テレビCMでどういうドラマなのかと興味を持ち、見てみたらものすごく面白いドラマでした。


 物語の舞台は「エンジェルハース」という社員数名の小さな会社。


「海外で亡くなった日本人のご遺体を日本へ搬送する」

「日本で亡くなった海外の方のご遺体を母国へ搬送する」


 そんな仕事をしている会社です。


 高木凛子たかきりんこという若い女性が転職をしてこの会社に入社します。凛子はなかなかいい大学を出てなかなかいい会社に就職をしていたものの、会社に馴染めず退職、就職活動の中で出会ったエンジェルハースの社長伊沢那美いざわなみに言葉巧みに持ち上げられて入社することになります。


「国際的に活躍できる会社、英語が得意なあなたのような方にぜひ来てもらいたい」


 そう言われて入社したものの、実際の仕事は海外から送られてくる遺体を修復し、遺族へと届ける仕事。かなりハードです。

 ある日の飛行機の貨物室から降ろされた遺体はダイビング途中に溺死した男性。何重にも目張りをされ、流れる体液を染み込ませるためにトイレットペーパーを詰められて届けられます。棺の蓋を開けた途端に流れ出る臭気、凛子はたまらず部屋を飛び出し嘔吐しますが、社長の那美に「とっとと戻れ」と呼び戻される始末。


「だまされた」


 エンジェルハースに入社したことを後悔する凛子。思わず母にそういう内容のメッセージを送ろうとしては文字を消してしまうことを繰り返す。


 そんなある時、フィリピンのスラムでギャングになぶり殺しにされた青年の遺体の搬送依頼があり、社長の那美は凛子を連れてフィリピンに飛ぶ。

 現地には青年の両親も来ていますが、殴られ蹴られて殺されているので遺体の損傷は少しばかりひどい。父親が一人で遺体確認に向かい、母親に「おまえは見るな」と言うぐらいレベル。


 その遺体が消えてしまう。どうやらスラムのギャング仲間が引き取っていったらしい。


 激怒する父親は、


「最後の最後まで迷惑をかけて、もう遺体はいらない、搬送料と葬式代を払わなくてよくなってそのことだけが親孝行だ」


 と、息子の遺体を探すことなく夫婦で帰国しようとする。

 

 青年は十年ほど前にバイト先の厨房の流し台で泡まみれになって風呂代わりにしている動画が拡散、炎上して父親の仕事にまで支障を来すほどのことを仕出かしていた。それ以外にも色々と親子の確執があり、四年前に「もう二度と戻らない」と家を出てそれ以来音信不通であったという。


 その両親に那美は、


「最後のお別れをしないと絶対に後悔します、できる限りのことをさせてほしい」


 と申し出て、母親の了承を得ると遺体を探しにスラムへと乗り込むことに。


 青年の四年間は、スラムで知った真実とは。


 こんな話が6つ並んでいる第1シーズン、夢中になって見てしまいました。

 残り5話も簡単なあらすじだけを。ドラマの解説サイトでは、かなり細かい、ネタバレになるぐらい説明がありますが、そこまでは知りたくないけど興味があるという方に読んでいただけるとうれしいです。


 第2話。アフリカのある国で外国人を狙ったテロがあり、6人の日本人も殺害される。そのうちの3人とその遺族の話。そのプレジェクトのリーダー的な年配の男性、若くて婚約者がいる女性、そしてもうすぐ子供が生まれる男性の3人。3人ともその国の発展のためにと遠い国にやってきてテロに巻き込まれて命を落とした。損傷の激しい遺体もあり、那美たちは無事に3人を家族と対面させられることができるのか。


 第3話。ある小さな食堂の女主人がKPOPアイドルのコンサートを見にソウルに行き、そのホテルで大動脈瘤破裂で死亡した。そしてもう一人、こちらは日本でも大きなある会社の社長、ソウルのホテルでそういう職業の女性とことの真っ最中に俗に言う腹上死を遂げていた。両名とも同じ日のほぼ同じ時刻に葬儀の予定だが、台風のために飛行機がほぼ飛ばず、1人しかその時刻に間に合わせるように帰国はできなさそうにない。那美たちはどちらの遺体を葬儀会場に届けるのか。


 第4話。技能実習生として日本に来ていたベトナム人の女の子が交通事故で亡くなった。遺体をそのまま搬送する費用はなく、火葬して遺骨を遺族に届けてほしいと言われて遺体の搬送中、亡くなった女の子の元同僚が遺体を乗せた霊柩車を奪い、遺体と共に勤めていた縫製工場に立てこもってしまう。元同僚の要望とは? 


 第5話。年配の男性と結婚してはすぐに夫が亡くなり遺産や保険金を手にした若い妻に世間は遺産目当ての殺人ではとの目を向けるが、「限りなく黒に近いグレー」と罪に問われることがない。その妻が今度は外国の大富豪と結婚して日本に帰国し世間は大騒ぎに。そんな中、その大富豪がホテルでなくなりまたその妻に疑惑の目が向けらる。果たして大富豪の死の真相は?


 第6話。これは細かく書くとかなりネタバレになりますので、軽く触れる程度にします。

 凛子の親族が海外で亡くなり那美と共にその国に飛びます。内容的には、某金融業のCMの「あんた、そこに愛はあるんか?」的展開ですが、人の心というのはなかなかに難しいというお話です。


 そして第6話のラストに飛び込んできたとんでもない情報。


「早く第2シーズンお願い!」


 そんなところで終わります。


 原作があり、ものすごく読みたくなったので図書館で予約をしたものの、


「もしかして原作読んだら第2シーズンのネタバレになってしまうのか?」


 と心配になったんですが、原作はノンフィクションでドラマはオリジナルのフィクションになっているようです。西島秀俊さんの「MOZU」をなんとなく思い出しました。おそらく原作を読んでもドラマの邪魔にはならないでしょう、うん。


 1話大体1時間弱、全部で6時間ほど。アマゾンプライムで見られますので、ぜひぜひ見てください。おすすめです。

 どの話も死と遺体がその中心、とても悲しくさびしい話でありながら、その死ゆえに知ることになる真実がなんとも優しい。そんな不思議なドラマです。

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