5. 偽の説得力を使う

 世の中には何かと無理や無茶を言う人がいるものだ。


 説得の体は取っているが、その実ただ商品を無料にしろというクレームだったり、他人の作った常識や格言にただ乗りしてさも自分が大したものだと語るような輩はごまんといる。まあ、この文章もそうなのだが。


 さて、自分の意見を押し通すというのは、恥を知らなければ力業で何とかなる。

 登場人物がそういったことをやったとしても、作者が辱められるわけではないので、ぜひこの技術を流用してみよう。


 さて、まず説得力が無くても説得できる手法とは何か。

 最もよく行われるのは単純に大声を出すという事だ。


 「三人に勝てるわけないだろ!」

 「「馬鹿野郎お前俺は勝つぞ!!!!!」」


 これは声が大きい、威圧することで、「なんだこのオッサン?!」と相手を困惑させ、相手の主張を取り下げるという行為なので、厳密に言えば説得ではないのだが、説得力という意味では非常に強いので取り上げた。

 大体なろう小説のモンスターは大声を出すだろ?そういう事だ。知らんけど。


 つぎに、常識、社会通念、大きな主語を用いた説得だ。


「男と男が絡んでるビデオを笑いのネタにするとは常識に反している」


 一見すると説得力があり、なかなか抵抗しづらい意見に見える。

 しかし、笑いに対する感じ方が人それぞれであるのは当然のことだ。

 笑いに「常識」があればお笑い芸人という職業は無くなってしまう。特別性、言い換えれば希少性による価値が無いからだ。

 高校生の時に「ジョイマンが好き」と言われたのでみてみたが、マジで笑えなかった。だがあれで滅茶苦茶笑ってる人もいた。うん、つまりはそういう事だ。


 例え「常識」があったとしてもそれに従って生きるかどうかは個人の問題だ。


 そして、小説の主人公というものはそういった常識に対して反証を示して問題を浮き彫りにする。そうして作者の表現したいことを具体的な形にしていくのだ。


 常識が無ければ非常識がわからない。逆もしかりだ。

 まずどちらかを用意して、そのアンチテーゼとして人物を戦わせるとよいだろう。

 言い方や態度に誤魔化されないで自身の生き方を追求する姿というのは、困難ゆえに美しく見えるものだからだ。

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