第14話:過去に良い思い出が無い!新人は何やら困惑してるようだ!


生重混合紫影セイジュウコンゴウ シエイ


「......!」


ドン


 後ろから明らかに禍々しい気配を感じ、すぐに地面から土塊を出して、足を転ばせる。


シュワァァァ


 地面に倒れた直後、頭の上ら辺になんか邪が集まって凝縮した様な雰囲気の魔法が過ぎるのを感じ、撃たれた方向を向くと、溶けている様な、ボロボロと劣化していく。


 俺は当たらなくて良かったと思うと同時に、すぐに立ち上がり警戒を強める。


(マジで、当たったら1発で死ぬようなヤツばっかりだな......って、あれ?)


 相手が居た方を見ると、くすんだ白髪が倒れていた。

 

 そりゃ200kg超えのパンチはかなり堪えるだろう。

 速く自分の部屋に戻ろ......あれ......


「今俺がやってる事って、普通に死刑どころじゃ済まされないレベルの事では.....」


 いくら意図してこの状況になった訳じゃ無いにしろ、この状況はまずい。

 いや普通に逃げようにも、準備中に多分この世の終わりみたいな魔法喰らって死ぬだろうし......


(はぁ.....とりあえず後で考えれば良いか。)


 アイツの近くに雫を移動して、洞窟から出た。


 


 洞窟から出ると、眩しい光に目が眩む。


 来るのにもかなり魔力を使った上、出発したのは7時位の早朝。となると、今は昼くらいか。


「え〜と、魔力は.....それなりに残ってるな」


 ただ、これで今日1日を過ごせるかは微妙だな.....何が起きるかわからないし。部屋に戻ったら、マジックポーションでも飲むか。


 マジックポーション:魔力を込められた水。魔法を使うヤツが余った魔力で作るポーションで、これを飲む事で瞬時とまではいかないが、魔力を回復することができる。

 要するに、もしもの時の魔力のタンクのようなやつだ。


(そのタンクを部屋に置いてきてどうするんだ......)


 自分に呆れながら、車輪に魔力を手で直接込めて、動かす準備をする。


「これで良いな。」


 魔力が込められたのを確認してから乗り込み、車輪を超高速で動かす。


「あ〜才能が有って本当に良かった〜」


 俺は産んでくれた親と気付かせてくれた幼馴染の兄貴に感謝しながら、周りの景色を楽しむ。


「はぁ......アイツら元気かな......」


 感謝をした時余計な事思っちまったな。


「なんだかんだ長い間一緒に居たからな.....結構心に来たんかね......」


 今では夜は孤独感と諸々のトラウマで寝れず、仲間には追い出され、挙げ句の果てにクソ貴族のせいで、魔族の領地を掻き乱すクズに成れ果ててる.....


「よし!今度会った時アイツらボコボコにしてやる!」


 なんだかんだで俺もメンタル強いな。まぁ長年ちゃんとした冒険者をやってきたからな。

 混合人種の村でぬくぬくしてる奴らとは違うんだよ。

 どうせこんな所に来れたのも愛人どころか、パーティーのメンバーから疎まれたり、友人も居ないような奴らなんだろうな。


(まんま俺のことじゃねぇか。まぁ、こういうところが俺のメンタルが強いところと、アイツらとうまくやれてたところでもあるだろうけど。)


「はぁ.....景色に飽きてきたせいで、なんか余計な事も......なんだ......」


 あと10秒も経てば行けるであろうかなり離れている所から、暗闇になっている。

 

(断定は出来ないが、かなり嫌な予感がする.....魔力は.....正直心許ない.....けど....)

「なんとかなるだろ。」


 俺は着ているローブを少しずらす。そもそもボタンとかの止まるやつはないからあまり意味は無いけど、まぁ、念のためだ。

 









〈視点チェンジ〉


『酒場』


「最近このパーティーのおかしさに気付いてきた気がします.....」


 紺色の三つ編みの女性....アノさんと一緒にお酒を飲んでいた私は、そんな愚痴をこぼす。


「まぁまぁ。気持ちはわかるけど、そこまでおかしくは....ない.....はず.....」


 アノさんがパーティーがおかしい事をなんとか否定しようとするが、言葉に詰まっている。

 私はアノさんに追い打ちをかけるように、最近溜まってきたものを吐き出す。


「だっておかしいじゃ無いですか!なんでランクAのドラゴンを一撃で倒してるんですか!ランクAの目安ってAランク2〜3人で倒せるレベルって意味ですよ!?」


「うん、そうだね。」


「そりゃ初めてドラゴンの討伐行った時は、私の研修みたいな感じだったから、私の為にドラゴン相手にも色々手を抜けるなんて、流石Sランク!って思いましたよ!感動です!」


「あはは、有難うね。」


「こちらこそ!で、なんでレッドドラゴンを一撃で倒せてるんですか!?」


「まぁSランクはAより上だし....別にそんな変じゃ無く無い?......多分。」


「いやいやいや!百歩譲って、1対1で倒すのはまだわかります.....ですが、レッドドラゴンって、1つの国滅ぼせるくらい強いですよね!?」


「そうらしいね.....」


「それは鱗が硬くて、物理攻撃や魔法があまり効かない事が原因らしいですけど、それを一撃とかこのパーティーどうなってるんですか!?」


「そんなこと言われてもね......」


「あの人が言ってた事が良く解りましたよ!始めは聖女よりサポート出来るとかそんな訳ないじゃん!とか思ってましたが!というか全員が魔物に向かって総攻撃するし、サポーター的な人は戦闘では要らないし、地図とかその辺りでサポートするしか無い!そう考えると、土を操るあの人が如何にチームサポートしていたか想像は容易ですよ!」


「まぁ確かに.....」


「それだけじゃ無いですよ!他にも!なんで聖女が......」




続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る