第13話:アイツの土魔法は一味違う


土流牙乱どるがらん 土撃乱獄(どげきらんごく)


 ドゴゴドグガガガ


 全方位から鍾乳洞の先の様な鋭い土塊を飛ばされる。

 一つは、先述の通りの速い針状の土塊。

 もう一つは、返しが付いている大きいドリルの様な土塊。返しがついている分一度刺さったら取り出すにもダメージが大きそうだ。

 平地だとまずまずだったのが、洞窟内の様な囲まれている空間だと、その真価を発揮するのか。


(異なる速度の2つの攻撃で、進む余裕もないが、影炎がある。十分だ。)


影炎鈍纏エイエンノ マトイ



 影に集まっている影炎を動かし、洞窟の四方の近くの壁に纏わせる。

 すると、次に出て来る針とドリル状の土塊から、急激に遅く成る。


(これでこの周囲は大丈夫。後はあちら側の壁も纏わすだけだ。)


 前に余った影炎と共に踏み込み、使い慣れた技を放つ。


死死狂亡悪魔乃手ダイデスキョウナキアクマノテ


 グヒャアグヒャア


 見慣れた悪魔の手が敵へ掴み掛かる。

 

(これだけだと、少し心許ない。すぐに攻撃出来るようにしておこう。)


〈視点改〉


(あ〜、もうさっぱりわからん。なんだよ訳の分からんコエェ魔法をポンポンポンポン出しやがって。しかも全部効果違うし。こちとら土操って色々するだけだぞ!?)


 相手の周囲から飛ばしてた土流牙乱と土撃乱獄が急に遅くなったのと、俺の足の重さ.....

 多分えいえん?の効果は、触れている物体の速さを遅くする効果。

 俺の、地面や壁の土を操る戦い方とは最悪の相性.....


(ホンットに相性悪いな!マジで顔に出そうだクソボケ。)


 とはいえ近づかさせなければ、何とかはなる。

 早速影炎と一緒に攻めて来てるけど.....


(とりあえず土流牙乱どるがらん土撃乱獄どげきらんごくはそのままでいいか。魔力的にも余裕があるし。後は......コイツらを使うか。)



〈視点チェンジ〉



九極土良流きゅうきょくどりる


 前方からドリル状の九つの土塊生えて向かって来ると同時に、周囲の魔力が濃くなったのを感じる。 

 

(ここで攻めて来るか....よほど寸前で止められる自信があるのか.....?)


 戦い始めてから全く動いていないし、前回も近づいた時、接近戦を挑もうとは全くしていなかった。

 恐らく自身の身体能力は貧弱。

 ドリル状の土塊は悪魔乃手で崩せるし、このまま本体までいけるし、絶気はいつでもてる。もう少し近づいて直に撃ち込むのが良いか。


 ズズッググ


「.......!」


 目の前に居たはずのアイツが凄まじい速さで移動した.....?


(.........!始めに影炎を喰らった時の土の装甲が着いている.....もしや土で作られた装甲を動かす事で、高速移動を可能にしているのか...)


(良し!俺の方を向いてる!アイツらの方が死角になったな。チャンス!)


(.....?なんだ.....一瞬顔がにやけ.....)


 グギガギグゥ


「く.....か.......」


 背中の辺りに強烈な衝撃と痛みを感じ、その場に倒れてしまう。


(......なん......だ......一体.....何が....もしや.....)


 辛うじて前を向き、眼だけを動かし辺りを見渡す。


 そこに有った筈のゴーレムが居なくなっていた......

 

(やら.....れた......九つの土塊を.....出した時点で......ここまで.....見通していたのか.......)



(はぁぁぁぁぁ......危ねぇ.....高速移動はミスると足が明後日の方向にいっちまうからな.....本当に良かった......は、さて置き、さっさと目的果たす為に帰るか。)

「今回の件は本当に申し訳無かった。いつか必ず償うから、今日はさらばだ。」


 奴は何かを置き、見えないがゴーレムと一緒に去ろうとしているのだろう。


(ふざけた事言って.....まだ終わらない......逃がさない.....)


 今まで張り巡らせていた影炎を集めて、奴に向けて放つ。


生重混合紫影セイジュウコンゴウ シエイ




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