第2話 お披露目パーティー

 恒例で開催される舞踏会パーティー。

 もちろん出席者は人間以外の種族たち。


 エリエナは両親が魔女の家系だ。

 とはいっても力があると認識したのは10歳の時。


 通常、能力の発現は3、4歳に多い。


 ゆえに両親はあきらめて、

 普通の人間として育てて来た。

 

 普通に育ってきたからゆえに

 異能持ちの種族や慣習がいまいちわからない。


 新人魔女のエリエナ・アレクサンドラは黒いドレスを着て参加した。

 箒をもって完了だ。

 

 なにぶん魔女としての才能に目覚めたのが遅かったため

 まだまだ勉強中のみだ。

 

 やっと空を飛ぶ練習をしているところ。

 他の魔女は小さいころから箒に乗って

 簡単に体得するらしいのだが、

 遅く開花したエリエナは理論的に攻略していくタイプだ。

 

 感覚ですべてを学んでしまうほかの魔女とは違うのだ。

 会場内に集まったものは

 透明人間、包帯男、狼男や

 フェニックスなど様々な種族がいる。


 先輩の魔女、メデゥーサに魔王を聞く。

 この世の力関係を教えてもらう。


 魔女の老婆から手渡しされたものをじっと見る。

「腕輪」

「それを見てみろ」

 鏡の中に文字が浮かんでいる。

「50」

「それが、始めたときの値。

 好きになれば魔力が下がり、0になれば死ぬ」


「相手を惚れさせれば魔力は上がるの?」


「まぁ、そうなる。は」

「これまでに上がった人を見たことないってわけね」

「ああ」


 惚れた魔女を引きずっていることを教えてもらう。

「300年前にはいい勝負をした魔女がいたらしいが、

 記録の範囲で面識のある者はいないそうだ。ワシもしらん」


「先代の魔女は0になって死んだしねぇ」

 メデゥーサは髪を弄りながらつぶやいて、老魔女は説明を追加する。

「その前もね」

「どれくらい魔王の勝ちが記録されているのかしらねぇ」

「随分前のことだから」

 そもそも始まりはわからないとのことだ。

 覚えている限りの魔女は戦って死んだのではなく

 惚れて死んだのだと。


 それなら私が惚れさせてやる。

 新人魔女エリエナは性格が悪かった。

 外見に関しては自信があるが、彼の好みを知りたい。


「かのお方は金髪が好きなのかしら」

 一番長生きと思われるフェニックスが口をはさむ。

「昔のカノジョは黒髪でしたな」

「黒髪ね」

 ウィッグを付けてロングヘアにしよう。

「昔の大魔女は清楚な感じだったかと」

「違うわ。それは先々代の片思いしていた大魔女よ。

 それよりも前のことだから」


「えーと。どんな方じゃったかの」

「なんとなくしか覚えていないってこと?」

「何分、代替わりが早くてのぅ」

 大きく息を吐いた。

 魔法で魔王が好む姿になればいいだけなのだろうが、

 相手は魔王だ。


 すぐにそんな小手先だけの魔法など

 といてしまうに違いない。


 情報はこの先どんなことで必要になるかわからない。

 エリエナは自分の手を見つめる。


 全力で魔法を使ったことはまだない。

 けれども、先に能力に目覚めている者たちと

 同じ力を持っているかといわれると違うとは思う。


「力は温存に越したことはないわね」

 試すところもないと困るけれど、今はまだその時ではない。


 お披露目パーティーに参列してくれた各種族の代表に挨拶をして回る。

(今日の主役は私だもの。まだまだ目立つわよ)

 そうはいっても粗相はしない。


 新米とはいってもマナーは叩き込んできた。

 これから学んでいけばいい。


(魔女の歴史を学びなおす必要があるわね)


 誰に聞いてもわからないでは、

 魔王の惚れさせ方がわからない。

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