オモイデサガシにまつわる噂の真実と、青年の復讐心の先にある未来とは──

 読了後のレビューです。

 鹿波あずさが住む街の奇妙な噂。それは、人を喰らう妖魔が生みだす『オモイデサガシ』という亡霊にまつわるものです。
 ある日、妖魔への復讐を誓う、霧島愁夜という青年と出会ったことで、梓の運命が大きく変わっていきます。

 気になる要素の提示の仕方が絶妙で、物語に自然と引き込まれていきます。そしてジャンルはホラー作品ですが、それだけに留まらない魅力があります。

 私が特に魅力を感じた点は『人間ドラマ』です。人の優しさ、悲しみ、憎しみ、怖さ、醜さなど、どの感情も、作者様は丁寧かつ繊細な文体で表現されていらっしゃいます。

 悲惨な展開も多くありますが、安心できる要素や人物も上手く織り交ぜていらっしゃるので読み進めやすかったです。読者様への配慮などのバランス感覚にも優れている作者様だと思います。

 読後感は爽やかで優しい気持ちになれましたし、特に最終話の主人公の言葉がすごく沁みました……!生きていく上で、難しいけどとても大切な事だと思います。ネタバレになるのでここでは触れないようにさせていただきます。他にも気づきを得られる見所がたくさんありますよ!

 少しずつ読み進めて、言葉や心情の一つ一つを噛み締めながら余韻に浸る。あるいは一気読みで、美しさと恐さが同居する世界観や人物達にどっぷり浸る、などなど、どんな読み方でも楽しんでいただけると思います(私も、二十九話まで一気に読み進めてから、残りは少しずつ浸りながら読ませていただきました)。

 是非少しでも多くの方に読んでほしい作品です!!


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