青年は妖魔への復讐を誓う

大学生のあずさの住む町には、奇妙な噂がある。
それは人を喰らう妖魔と、妖魔が生み出すオモイデサガシという亡霊がいるという、オカルトめいた噂。

そんな町に住むあずさがある日出会ったのは、霧島さんという青年。
彼はかつて妖魔に家族を奪われていて、復讐のためにこの町にやってきたのでした。
そんな霧島さんの復讐が話の主題なのですが。本作の見所は、復讐劇の中にある人間ドラマ。
霧島さんのことを知るうちに彼に惹かれ、放っておけなくなるあずさ。妖魔や復讐といった事情からは一本引いたところにいる彼女だからこそそれに囚われることなく霧島さんと向き合い、彼の力になりたいと、ピュアな気持ちで接することができ、そんな彼女の存在が霧島さんにとっても救いになる気がしました。

また、読み進めているうちに思ったのが、妖魔だけが悪いというわけではないということ。
妖魔でさえも事情を抱えていて、妖魔が悪者、人間が良い者なんて単純な話ではないのです。
話に関わる人間の醜さや優しさが丁寧に描かれていて、読み進めるうちに物語の世界にどっぷりはまっていました。

復讐の果てに何が待つのか。最後まで見届けたいです。

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