第12話 ゴーファムの器量
ゴーファム将軍の好意で野営ながら、夕食を御馳走になっていた悠希とレインド。
だが、悠希の圧倒的な喰いっぷりにあの将軍が目を丸くしていると豪快に笑い出した。
「あっぱれな喰いっぷりだ! しかも行儀のよい食べっぷり! がははあは! ますます気に入ったぞ悠希よ!」
「ありがとう将軍」
焼き豚や香辛料のきいたスープ。さらにはパンなどを貪り食ってはいるが、その食事っぷりは丁寧で食べこぼしなどもまったくない。
「うむ、とても良いご両親に育ててもらったのであろう。悠希を見てるとそう思えてならん。よし、決めたぞ。これを渡しておこう」
懐から何かの紋章の刻印されたペンダントを取り出す。
「将軍それは……」
思わずファルベリオスが口を挟んでしまったと後悔したが、ゴーファムは優しく気にするな、という意図の目配せをして話をつづけた。
ごつく古傷だらけの大きな手が優しく悠希の手を包む。
「綺麗……不思議な光を放ってますね」
「これは当家に伝わるペンダントでな、家紋が刻まれている。何か困ったことがあればこれを見せれば助けになろう。我、ダラムス王国 将軍ゴーファムはそなたの後見人となろう」
「こ、こうけんにん? って何?」
思わずレインドとファルベリオスに助けを求めると、ゴーファムはまた豪快に笑った。
「よいよい、まあ我は悠希の友、味方ということじゃ」
「ああ、そうだったんですね。ゴーファムさんありがとう!」
「じゃあそうだな、明日の朝、お礼をしますね。ってレインド君、ちょっと作業スペース確保するの手伝って、そこのメガネも」
「め、メガネって!」
「手伝ってやるがいいファルベリオス」
何やら火がついてしまった悠希の天幕に明かりを運び込み、作業に熱中し始める。
それは夜遅くまで続いていた。
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翌朝、これまたたっぷりと朝食をいただいた悠希は、ラングワースへ出発するゴーファム将軍にあるものを渡すのだった。
『おお、これはそなたが使っていた風鳴きの剣ではないか』
『ああ、高周波ブレードのことね。このトリガーを引くともう、なんでも切れちゃうから気を付けてくださいね。武器壊しちゃったからそのお詫びってことで』
『むん! なんという見事な剣であろう! よし、この風鳴きの剣はありがたくいただくことにする!』
試し切りにと高周波ブレードを展開したゴーファムは、軽く遺跡の残骸を斬りつけてみるつもりであったが、あまりの切れ味に石がバターのように切れてしまうことに驚き、意外にかわいい声で喜んでいる。
『悠希よ! 本当によいのだな!?』
『うん、ゴーファムさんに使ってもらったほうがいいと思うの』
『我が剣として共に歩もうぞ、風鳴きの剣よ! して、ファルベリオス、後は任せたぞ』
レインドの隣にいたファルベリオスは深く、深くゴーファムへ頭を下げるのだった。
ゴーファム隊は皆悠然とラングワースを目指す。
見送るのは3人。悠希と、レインド、そしてファルベリオス。
『じゃあミラージュアウト』
「え!?」
あのシルヴァリオンが虹色の粒子になって分解されていく様に、ファルベリオスが茫然と立ち尽くしている。
「まあ驚くわな、俺も最初は絶望したっけ。安心しろ、悠希は再召喚が自分で可能なんだ」
「ま、まじか!?」
「まじだ」
「とりあえず町に帰りましょ。シャワー浴びたい」
「お、おう、今馬車を出すよ」
ファルベリオスは昨夜ゴーファムから受けた命令のことを思い出していた。
”
「わ、私にあの者たちと同行せよ、と!? 嫌です、私は将軍を支える片腕でありたい!」
「いいや、魔骸の進行が進みすぎているこの状況では、悠希の持つ力を解明し、味方になってもらう必要があるのだ。お前のことだそれは十分理解していよう?」
「た、たしかに」
「ならば、無理強いではなく、あの娘の意志で共に戦ってもらいたいのだ。そうでなかれば恐らく力を発揮できんだろう。礼を尽くし、誠実に、親交を深め、できればあのミラージュキャリバーという存在について調査せよ。だがもし、人類に敵対すると確信したときには……わかっておるな!?」
「身命を賭して命令を実行いたします」
「まあきばるな、良い娘だと思っておるよ我はな」
夜風に揺れる蝋燭の明かりが、ファルベリオスの涙で滲む視界を静かに照らしていた。
”
ロナの町に戻った3人。意外にも悠希はファルベリオスのことを時折からかったりしながら、拒絶はしていないようだ。
レインドまた同じに。
(結構親しみやすい奴等なのかもしれない)
そう思っていたファルベリオスであったが、レインドから受けた相談内容に思わず絶句することになる。
「金がないだと?」
「そうだ」
「リシュメアから活動資金とか出ていないのか?まったく」
「仕方がないだろ」
「お前、閃紅のレインドと言われるほどの機士であったら、稼ぎだって」
「理由はさ、あの、分かるだろ……」
「おい、まさか、しょ、食費か」
こくりと頷きレインドは頭を抱えた。
「たしかに10人の大食漢を養っているようなものだからな……」
そのとき一階でお茶を飲んでいた二人の元へ、シャワーでさっぱりした悠希が帰ってきた。
湯上りの肌が紅潮し、なともいえない色気がその幼さの残る美貌から滲み出ていた。
思わず見惚れる二人であったが、咳払いでごまかしつつすぐに取り直しある問を投げかけてみる。
「悠希、それで今後の方針なんだけど、お、俺のミラージュキャリバーどうなりそうかな」
「あ、ごめん、それなんだけどね、材料が、足りない……」
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