第37話

「は??」


何故か連れてこられたよく分からない場所。

どうやら建物の中らしい。

そこでライドが発した言葉というか、声がそれだった。


「まぁ、うん、わかんないっすよねー。

あ、でもここご飯がとっても美味しいッスよ!!

この前なんて、拾われた子がとってきたゴブリンの脳みそ食べたっす!!」


ライドの反応を見て、そう言ったのはメイと呼ばれている魔族の少女だ。


「え、ゴブリン?たべた??」


ライドの理解が追いつかない。

そのメイの横で、ライドをじいっと観察していた少年――トオルがウカノへと視線をやり、断言した。


「大丈夫ですよ、彼は裏切り者ではありません。

それはそうと、大丈夫ですか??」


その言葉がほかならないライド本人へと届く。


「え、裏切り者って何のことっすか??」


「あー、まぁ、気にすんな」


ウカノが面倒くさそうにそう言った。

そんなウカノをトオルが心配そうにみている。


「いや!!気にするでしょ?!

なに裏切り者って??!!

俺、知らないところで妙な嫌疑かけられてません?!」


そこに、アエリカが現れる。

手をパンパンと叩いて、その場を静かにさせる。

その横には車椅子があった。

保護したあの少女――ハヅキはいない。


「はいはい。そこまで。

とりあえず、ウカノは至急医務室に連れてく。

理由は、わかってるよね?

様子見しようとしたのはわからないでもないけど、感心しないな。

すぐ医務室いけって言ったのに……」


アエリカの言葉の意味をはかりかねて、ライドは名指しされたウカノを見た。

ウカノは困ったような表情をして、しかし素直に頷いた。

そんなウカノの手をアエリカは慎重にとって、引き、車椅子に座らせた。


「了解です」


「え、あの?」


戸惑いつつも、ライドがウカノへなんのことか聞こうとする。

しかし、それよりも早くメイがこんなことを言った。


「そうっすよー。

腐ったままにしちゃ、死んじゃうっスよー」


さすがに、メイにはウカノは言い返した。


「もうちょい様子見て相談しようと思ってただけですよ」


ライドもついでとばかりに、メイに聞いた。


「えっと、腐る、とは??」


メイがコテンと首を傾げて、ウカノを指さす。


「そのお兄さん、怪我したとこから腐ってる臭いがしてるっす。

放っておくと死ぬやつの臭いっすよ?

わからないっすか?」


ライドが驚いた顔をして、ウカノを見た。

ウカノは、何故かヘラヘラと笑っている。

さらにメイが言う。


「それに、目の焦点がおかしいっす。

お兄さん、ボクたちのことちゃんと見えてるっすか?」


それに答えたのはアエリカだった。


「見えてないな。

気配だけで、誰がどこにいるのか把握してた。そうだな?」


「いや、定時連絡の時に相談しようとは思ってたんですよ?

でも、暇がなくて」


「あのなー、そんなんでお前の目的達成できると思ってるのか??」


アエリカが呆れている。


「でも、倒れるくらいのヤバさは感じなかったんで。

それに、目が変になったのはここに来てからだし。

だから、頃合を見計らって相談しようとは思っててさ」


後半の言葉はライドに向けられていた。

さすがにここでライドが怒鳴った。


「っ、ば、馬鹿か?!あんたは?!」


しかし、ウカノへのツッコミどころが多すぎて、言葉が続かなかった。


「はいはい。とりあえず医務室急ぐぞー。

大丈夫、ここのスタッフはめっちゃ優秀だからついでにいろいろ調べよう」


アエリカが言いつつウカノの乗った車椅子を押し、医務室へと直行したのだった。

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