報告とかいろいろな人が出てくる話

第36話

「……」


もそもそと、ライドが用意してくれた朝食を食べる。

テーブルを挟んだ向かいには、同じように朝食を食べているライドがいる。

昨夜の、ミズキ達とのやり取りが蘇る。


(さっさと白黒つけておくか)


なんて考えつつ、ウカノがライドへ言葉を向けようとした時だ。

ドンドンドン、と家の扉が叩かれた。

それも、激しく。


「こんな朝早くから、誰っすかね?」


「俺の客じゃねーぞ」


「俺でもないですよ」


「鍵空いてるだろうに、勝手に入ってくればいいのにな」


「鍵は俺が掛けておきました」


「え、なんで??」


「何でって、危ないじゃないっすか」


そんな会話をしつつ二人して席を立ち、玄関へ向かう。

毎日毎日、施錠をしないウカノの代わりにライドが玄関含めたこの家の施錠をしているのだ。


「なんで?」


ウカノは本当に何故かわかっていないようだ。

警戒心が無さすぎる。

そのことをライドは本気で心配していた。


「何でって、だから強盗とか入られたらヤバいでしょ」


寝込みを襲われるとも限らない。


「盗むようなものなんて、無いけどなこの家」


基本、貴重品は農業ギルドに入っている銀行に預けている。

金目のものとなると、農機具か庭にある畑、その作物くらいだろう。

しかし、ウカノ達の住む家の周囲は基本的に治安がいい。

犯罪なんて基本起こらない程度には、治安がいいのだ。

実家にいた頃の感覚と、そんな治安の良さもあってウカノは家に鍵をかけないのだ。


「命があるでしょう」


「あぁ、たしかに」


ライドの言葉に、ウカノは納得した。

自分の命を奪える存在など、現在はあのクリーチャーくらいだ。

しかも、家に襲撃をかけてくるならとっくにしてるはずだ。

それが無いのだ。

だから、今のところ安全だとウカノは考えていた。

そう、ウカノを本気で殺すなら。

そして、そのためにライドがここにいるのなら、食事に毒でも混ぜればいい。

ウカノの身体情報が盗まれているのなら、そこから彼に効く毒を精製することだって可能なはずだ。

けれど、ライドがそれをしている素振りはない。

だから、ウカノは昨夜こそ動揺したものの、ライドのことを本心から疑ってはいなかった。

そうでなければ、彼の作った食事を食べることなどない。


とりあえず、ライドへの確認は後回しだ。


玄関の扉を開ける。

そこには、農業ギルドからの使者がいた。

手短に説明を受ける。

なんでも、とある農家の私有地、つまり畑にて従来のモンスターとは違う化け物が見つかったのだという。

化け物は、畑に来た老女とその孫を殺害し、喰らった形跡があったという。

つまりは、この化け物をウカノに倒してほしいとのことだった。

ウカノは、すぐにその現場へと向かった。

学校は、この仕事を終えてから向かえばいい。

そう考えた。

何故かライドも着いてきた。

いつものように、ビクビクオドオドしつつも着いてきた。


現場に着くと、見知らぬ少女が化け物を倒しているところだった。

その背中は、攻撃を受けたのか服が溶け、むき出しになった肌は火傷をしたかのように爛れていた。


「なんなんすか、あの子?!」


「被害者?

怪我してるみたいだし、とりあえず声をかけよう」


ウカノが言ったことを行動に移そうとした直後。

少女の近くの空間が歪んだ。


「え、え?!

だれ?!あの人だれ?!

っていうか、今なにもないとこからでてきた?!」


空間が歪み、現れたのは慌てた表情を浮かべたアエリカの義理の父親だった。

それを見て、ライドがパニくる。


「あ、アエリカさん」


「へ?ウカノさんの知り合いっすか?」


「知り合いっていうか、父親」


ライドがさらに目を丸くした。

その時、アエリカの方もウカノ達に気づいた。


「おやまぁ、なんだろう、これ」


アエリカがそんな呟きをもらした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る