背徳と美徳の狭間に堕ちる

なんとも形容し難い読後感がクセになる作品でした。ミステリーとタグにあるように、読み進めるほどに謎が増えていき、最後は主人公とともに読者は予想だにしない結末を見るといったところでしょうか。少しずつ日常に亀裂が生じ、歪んでいく様はまさに圧巻でした。なにげない日々が、音もなく崩れていく瞬間を見た気がしました。

群像劇の形がとられており、物語を全体的に俯瞰できるのも本作の強みです。それゆえに生じる謎も醍醐味といえるでしょう。現状でも十分に楽しめる作品ですが、個人的にはさらにブラッシュアップできる作品だとも思っています。なにも批評する意図はありませんが、磨けば間違いなく化ける作品です。そう思わせてくれたのは、本作がそれだけのポテンシャルを秘めていることに他なりません。

多面的に人物を描く極上のミステリーを味わいたい方は、読んでみてください。