巡る環を走って、転げて

命ある限り誰もが進む、不思議な道。
まっすぐ続くかと思えば曲がりくねって、それでも先は続いていたり、途中で真っ暗闇になっていたり。それが環だと気づくのは、いつになるのやら。もしかしたら気づくことなんて永遠にないのかもしれない。だって、道を進むだけでも精一杯なんだから。

三つの短編からなる、徘徊紀行。
それはまさしく徘徊であり、それぞれの生きた足跡でもあるのです。なにげない日常と、そこから覗くあり得たかもしれない道の数々。そこには多くの想い出と、喜怒哀楽が眠っています。それらを横目に今を生きる人物たちの背中に、貴方は得も言われぬものを感じ取ることでしょう。もちろん、解は無数にあります。あるいは、それを解と呼ぶこと自体が間違いなのかも。まずは構えずに、文章そのものを楽しんでみてください。

その次に自分なりの考察を思い描くのです。最初は難しいかもしれませんが、すぐに慣れてくるはずです。なにせ本作は、考察しやすい構成が強みなので。きっと考察の先に、自分だけの感動の形を見つけられるはずです。みんな形の違う人生という名の環。その環を進む人物たちに、貴方はなにを思うのでしょうか。巧緻な文章で紡がれる人間ドラマを楽しみたい方にオススメの一作です。