第6話 迷宮2
「今の声は、なんですか?」
「……深層の魔物の遠吠えだな」
ハンナを見る。限界を超えていて、立っているのがやっとと言った感じだ。
他の四人は、相談を始めた。
俺は、脇差を抜く。
「……ルークと言ったな。やる気か?」
「
リーダーが笑い出した。
「撤退はいい。だが、ハンナを連れて? 俺達に担いで行けと命令しているのか?」
「パーティーメンバーじゃないんですか?」
「臨時雇用だ。まあ、実力不足だしな……。正直お荷物なんだよ。怪我も増えてきているし、
ため息しか出ない。
ハンナを見る。
へたり込んでいた。
「では、四人で退いてください」
「……なにをしようとしているのかは、分からないが、ハンナを連れて
ここで、再度獣の咆哮が響き渡った。
「リーダー、そんな奴ら置いておいて下がろうぜ」
「……それじゃあ、パーティーは解散だ。素材はくれてやる。だが、俺達より先に
荷物は、俺に一任していたんだしね。勿論貰うさ。
「どうぞ、お先に!」
リーダーの顔は見ないが、舌打ちが聞こえた。
そして、四人がその場からいなくなった。
「ルーク……」
「俺に考えがある。とにかく狭い道を知らないかな?」
五回の戦闘で分かったことがある。集団戦の戦い方を、僅かだけど学べたみたいだ。
「えっ……。待ってね。
ありがたい。これで、俺の
「少し下がって、右手側の通路が細くなっているわ。ただし、その先は行き止まりだから、袋小路に自分から向かうことになるけど……」
「背後から、魔物がわくことはある?」
「それはないかな」
決まりだ。
「移動しよう!」
◇
「ふっ!」
脇差を振るうと、魔物が飛び散る。
先ほどまでの魔物と違う。明らかな格上。体格も大きい。
それでも、狭所空間であれば、それは俺に有利に働く。俺の飛ぶ斬撃を避けられなくなるからだ。
とにかく、射程距離に入った魔物を屠って行く。
太刀筋など、気にしていられなかった。
魔物の死体が積み上がり、足場が更に悪くなって行く……。
だけど、俺にも余裕はなかった。
『後何発撃てる……? 残りの魔力量は? それと、ハンナを連れてどうやって今の状況を打破する?』
口には出せない。
なので、あえて分れたのだけど……、俺の〈スキル:絶対切断〉で何処まで凌げるか。
望みがあるとすれば、高レベル冒険者の援護を期待したいところだな。
「また来たよ!」
ハンナは、〈気配察知〉や〈索敵〉に優れていた。〈
それと俺は、脳筋アタッカーだ。一撃必殺の技を持つが、連射はできない。外した時点で、ハンナに守って貰うしかない。
俺に〈必中〉なんかないんだ。
精神を研ぎ澄ませて行く。一瞬たりとも気を抜けない。
「ふん!」
また、魔物が舞った。
◇
「はあ、はあ……」
「入り口が、魔物で埋まっちゃったね」
今は、ランタンに灯りを点して、休憩中だ。
俺は荷物持ちも兼ねていたので、キャンプ道具一式が揃っていた。
水筒の水を、少しだけ飲む。
「……
「う~ん。一定時間経過すると、吸収されちゃうかな? ただし、ドロップアイテムは、残ると思う」
吸収か……。今は肉の壁が俺達を守ってくれているけど、そのうち消えるんだな。
それと、ドロップアイテムってなんだ? リーダー達が回収した物を持たされたけど。
ハンナと話していると、魔物の死骸が光となって消えた。
宝石や、骨、皮などがその場に残る。
それを見たハンナが、立ち上がり回収し出した。歩けるくらいには、回復したみたいだ。
「それがドロップアイテム?」
「そうだよ。
ハイリスクハイリターンだな……。
数十匹倒したけど、今日は地形が味方して、俺は無傷で済んでいる。そして、ハンナは回復したとはいえ、疲労困憊になっていた。
こんな日が、毎日続くとは思えないのが本音だ。
「今日は、動きの遅い魔物だったから良かったけど、こんなことを続けていれば何時かは大怪我しそうだね」
「……でも、
そうかもしれないけど、ハンナに合っている仕事とは思えなかった。
でも、口には出せない。
俺達は、自分の意思で"神様からの祝福"に合わせた職を選んで、孤児院を出たんだ。それを否定するのは、人格を否定する事と同義だ。
俺も、ハンナに誘われたからではなく、自分の意思で、今
余計な思考が過ったけど、今の危機を乗り越えよう。
「出口までのルートは分かる?」
「うん。私も大分回復したし、そろそろ脱出計画を練ろうか。幸い物資はあるんだし」
回復? "神様の祝福"の効果かな? でも確かに、ハンナは動けるようになっている。
先ほどは、骨折していたかのように、歩くのも辛そうだっただけど……。
ここで疑問に思う。
『俺の、"神様の祝福"の効果はなんだ? 副次的な何かがあると思うんだけど……』
どうも雑念というか、疑問が多いな。
ここで、ハンナが盾を構えた。
「……なにか来る?」
「……数は四。こっちに来るよ」
「俺が先に攻撃する。撃ち漏らしたら、守って! 足止めしてくれたら、確実に倒せる!」
「了解!」
遠隔攻撃の俺と、大盾のハンナ。相性はいいかもしれない。
そんな事を考えていると、それを視認した。
攻撃は……、まだしていない。
「君達、大丈夫か?」
人だった。多分、冒険者だよな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます