第5話 王太子と再会※ざまぁ回

 アンナたちはテーベの村を出た。

 途中、3つの村へ泊まった。

 そしてサンドリアという都市にたどり着いた。

 王都の次に大きな都市で、ここにアンナの伯母のマッキノン伯爵夫人が住んでいた。


 (会いたくないのよねえ……)


 意地悪な伯母だから、婚約破棄されたことを知られたらなんて言われるだろうとアンナは不安になった。

 子どもの頃からよく愛嬌のある妹と比べられて、可愛げがないとこき下ろされてきた。

 街の門のところで、マッキノン夫人が待っていた。

 その隣には、なんとルイ王太子がいた。


「なんで王太子殿下がいるのですか?」 


 アンナは会いたくない人ナンバー1とナンバー2に出迎えなられて、胃がキリキリと痛んだ。 


「実は新しい大聖女が見つからないのだ。大聖女の仕事をこなせる人材がいない」


 王太子が言うには、大聖女候補の何人かに試しに仕事をさせてみたが、誰もアンナのように大聖女の仕事をこなせなかったと言う。

 大聖女の仕事は、王太子が考えたように民衆の前に出たり、舞踏会で社交したりする派手な仕事ばかりではなかった。

 たとえば、民衆や貴族から出される陳状書に目を通して、王都の関係部署に繋いだり、大聖女の名前で多数の布告を出したりする。

 要するに、大聖女の神秘的なイメージとは異なり、細かい地味な事務処理能力や調整能力が必要だった。


「そなたの代わりに連れてきた聖女は地味ではないが、間違った布告を出したり、関係部署と上手く話せず怒らせたり、もう散々私が尻拭いする羽目になった。わたしが悪かったから、王都に戻ってきてくれないか」


「アンナさん、王太子殿下からが頭を下げているのよ。まだ婚約破棄は正式に発表されていないのだから、まだ間に合います。伯母さんからもお願いするわ。どうか戻ってきて王太子殿下をお助けして」


 王太子とマッキノン夫人は頭を下げた。


「……王太子殿下、どうしてわたしの伯母、マッキノン夫人をここに呼んだのですか?」 


「それは、その……」


「わたしの親戚を巻き込むことで、ご自分の要求を飲ませるためでしょう?わたしはそれが許せません。王太子殿下はいつも、そうやって第三者を使ってわたしを操ろうとしていましたね。王太子殿下のそういう女の腐ったような、男らしくないところが大嫌いです」


「まあ、王太子殿下に対してなんてこと言うの!」


「糞婆。お前は黙っていろ。これはバカ王太子と地味聖女の問題だ!」


 アルフォンスが怒鳴った。


「なんなの?この柄の悪い盗賊みたいな騎士は?レディに向かってなんて口を聞くのかしら!アンナさん。きっとこの人に影響されてこんな悪タレ口を覚えたのね。これはわたくしたちの家の問題です。騎士様こそ引っ込んでいただけませんこと?」


「糞婆。お前の魂胆はわかっている。バレバレだ。バカ王太子に味方し恩を売って、自分のバカ娘を王都の大貴族に嫁がせてようって腹だろう。貴族とは思えない、醜い豚だ」


「ぶ、豚って……。口が腐ってもわたくしはそんな言葉は口にしません。ねえ、アンナさん。あなたは子どもの頃からかわいくていい子だったでしょう。後生だから伯母さんの言うとおりにしなさい。ね?」


「伯母様、わたしは妹よりも可愛げないって、よく言ってしまたよね?それが今更可愛いですか?どの口が言ってるのですか?わたしは可愛げのない女なので、伯母様の言うことは聞けません」


「マッキノン夫人!そなたが説得するれば必ず王都に戻ってくると言っていたではないか?まるで話が違うぞ。これでは王都の大貴族とそなたの娘の縁談はなかったことになるぞ」


「ははは。やっぱりな。クズの考えることはこんなもんだ」


 アルフォンスは嘲笑った。


「そんな!もうしばらくお時間をください!2人きりで話せばきっと説得できます!」


「嫌よ!伯母様と2人きりになるなら死んだほうがマシです!」


 アンナはきっぱりと断った。


「ええい。役立たずめが。そなたはもう引っ込んでおれ。わたしがアンナと話す」 


「そうですか。この際ですから、王太子殿下には言いたいことが山ほどあります」

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