第42話 新規設定 ~|世界樹《ユグドラシル》からのお節介
そんな僕の思いとは無関係に、説明が始まる。
『まずは
全ての場所に設備が整っている訳ではない地球上で人間が活動する為には、
ですがかつて地上で使用された拠点方式の
ですので第3段階で採用された
また
これにより地球上の年平均気温がマイナス10℃以上の全ての地域で
説明は面倒くさいが、要は何処でも
南極や北極等の寒すぎる場所を除いて。
『物資の提供については……』
物資の提供や、更には他の移住者との交流方法についてまで。
物資の提供を求められるのはかつて巫女や巫であった存在だけ。
つまりエリやマキ達が死んだらそこまでという事のようだ。
ただし既に提供した物の修理や消耗品の補充等はしてくれる模様。
僕達の持ち物で言えばエアライフルの新規提供はエリやマキだけ、しかし修理や弾の補充はOKという事。
ただ、材料を揃えて
つまり長めの線維とかを確保すれば服だって
エアライフルや猟で使う罠だって鉄とか材料があれば
つまり材料だけでも自給できるようになれよという事だろう。
徐々にでいいから。
更に説明には今までに無かった種類のものもあった。
他の移住者とのやりとりについてだ。
『第二世代以降の生殖相手を探す為に、人的交流は必要となってきます。また今後の社会形成という面でも重要でしょう。
しかし現在は狩猟・採取型の生活が主体です。ですので1世帯に対してそれなりの面積の森林あるいは草原等が必要となります。故に集落を形成する等は困難と思料されます』
確かに狩り場が重なったら危険だし、獲物の奪い合い等も起こる可能性がある。
それに狩りすぎや採取し過ぎなんて事態が起こると不味い。
だからそれなりの広さが必要というのは確かだ。
『しかし
この時代には、既に人と人が直接対面する事はありません。文書や動画等を送りつける事で意見を表明するのが普通です。必要があって対面する場合でも仮想空間を使用していました。これは権利防衛と安全の為です。
生殖もそうやって相手を探し、人工子宮で人工授精をする事で実施していました』
確かに
僕の記憶の時代にも既に通り魔とかわけがわからない連中が結構いたし。
そんな事を思う。
『ただし直接の対面が無いという事が人間社会の奇形化を助長したという推測もあります。そこで交流の場として仮想では無い街を地球上に作る事としました。
また
つまり移動魔法が使えるようになったという事か。
行先は2箇所だけだけれども。
これはなかなか便利だと思う。
特に海や遠くの狩り場へ行った際などに。
『ただそれだけでは交流のきっかけを作るのは難しいでしょう。そこでハルトの時代にも存在したSNSや掲示板に似たシステムを作りました。
これはテーブル上に置かれているキーボードとマウスで操作します。また音声操作も可能です』
何と言うか至れり尽くせりだなと思う。
逆に言うとそこまでしないと地上移住は成功しないと
僕からみると
まあ第二世代の結婚相手とかを考えると、確かにそれくらい人的交流手段を考えないと難しいかもしれない。
僕の記憶の時代の日本でも少子化とか問題になっていたし。
『なお今回の説明内容については、地上移住用の肉体作製時に記憶に書き込み済みです。忘れた場合は
また移住場所については仮想空間上での生活場所と全く同一ではありません。新たな生活を始める際に確認を御願いします。
それでは良い生活を』
テレビ画面がブラックアウトした。
説明終わりという事のようだ。
良い生活を、か。
何と言うか複雑な気分だ。
条件が悪い訳では無い。
逆に随分と恵まれているというか、お節介すぎる位にサポートが充実していると感じる。
これから外を調べていくのが楽しみだ。
仮想空間の中とは言え、それなりに経験を積んだ。
向こうで揃えた道具等もひととおりあるようだ。
エリとマキもいるし問題は全く無い。
それでも僕は此処にいる事を素直に喜ぶ事が出来ない。
この移住までに行われた演算、仮想社会内で繰り返された実験の事を思うと。
仮想空間だから苦痛や死をも許容していいとは思えない。
そもそも仮想空間ではないこちら側とどう違うのだろう。
中にいる人間にとっては同等ではないだろうか。
僕もあの仮想空間の中にいたからこそそう感じるのだ。
勿論
しかし
この感情のぶつけ先は何処にもない。
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