第6話 (その3)

 私が玄関先でその文言を目の当たりにして、どうすればよいのかとさんざん動揺していた丁度その折に、表通りで自動車の音がした。近づいてきたエンジン音が、丁度この屋敷の前で停止するのが分かった。

 その瞬間、私の脳裏には数日前に見かけた黒塗りの車のことが思い出されていた。

 続いて、ドアを強くノックする音がけたたましく鳴り響いた。

 私は思わず驚いて首をすくめてしまった。その音があまりに唐突で無粋なのもあったが、その来訪者の目的がいったい何なのか、大いに不安をかき立てられるという意味で、その音は私を怯えさせるのに充分と言えた。

 錬金術師はわざわざ警告してきた。

 ならば、それに見合った警戒が必要なのだ。ドアの外にいるのは、それほどに招かれざる客なのだ。

 このまま息を潜めて居留守を使っていられればそれが一番だったろう。だがそうもしていられなかった。次の瞬間、正面のドアが向こう側から蹴破られて、見知らぬ男達が玄関に殺到してきたのだ。

「動くな!」

「抵抗するな! 抵抗すると、身の安全は保証出来ない!」

 大挙してなだれ込んできたのは、銃を手にした兵隊たちだった。いずれも黒っぽい野戦服を身にまとい、一抱えほどもある自動小銃を軽々と振り回す、屈強な男達だった。手紙を握りしめたまま立ちつくす私に、その銃口が一斉に向けられる。

 手を挙げて抵抗の意志のないことを示すべきだろうか、と考えるいとまもなかった。背後に回った兵士の一人に唐突に後ろから突き飛ばされ、前につんのめったところを今度は前方にいた別の兵士に腕を掴まれる。その兵士は素早く私の横に回り込んで、掴んだ腕を背中でねじり上げる。私は簡単に音を上げて、片膝をついてしまった。

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