第4話 (その2)

 愛くるしい双子の片割れの不慮の死は、多くの人々に悲しみをもって迎えられた。と同時に、やはり多くの人々の下世話な興味をかきたてたようで、暴漢が忍び込んで彼女に乱暴して突き落としただの、叔父や死んだ父に恨みを持つ誰かの差し金ではあるまいかだの、様々に言いたてられたものだった。とはいえ当日がひどい嵐だったこともあり、結局のところは皆不慮の事故だという風に結論づけざるをえなかった。

 葬列には多くの人がやってきた。幼年学級の同級の生徒たちは、教師に連れられて皆やって来ていたし、その親たちもやはり叔父や母と何かしら面識がある事もあって、皆列席していた。名の知れた工場主の自慢の美しい姪っ子の不慮の死とあって、死を悼む参列者というよりは物見高い野次馬めいた者たちも決して少なくはなかった。墓地へと運ばれていく小さな棺が主役だったのは確かだったが、その傍らに寄り添う双子の片割れもまた、その日は存分に衆目を集めていたのだった。

 私ももちろん、妹の突然の死に少なからぬ衝撃と深い喪失の悲しみを覚えずにはいられなかったが、その場のもう一人の主役として人々の注視のさなかに敢えて進み出ていかなくてはならないその状況に、眩暈がしそうだった。

 そう、結局そこに集まった人々は皆、その場で私が妹の代役を立派に務めあげる事を期待しているのだ! 私はその事実にぞっとする思いだった。悲しい席に、そんなうんざりした内心の心情が果たして顔に出ていなかったかどうかが気がかりだった。同時に、こんな道化めいた役割を不平一つ言わずにこなしていた妹のことを、単純にすごいと思った。

 そんなことを考えていた私は、他人には少し気後れしていたように見えたかもしれない。母は母でずっと声を上げて泣きわめき、叔父は悲しんでいるのかいないのか、終始気難しい表情を崩さなかった。

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