第11話 ――せんぱい?

「………………」


 ……チラッ。


 ぼーっと天井を見つめながら、時折、隣で横になっている彼女を見ていた。


 ……心が満たされるとは、まさにこのことだな……っ。大好きな彼女が隣にいる。それだけで……


「幸せぇぇぇ……」

「――はい。わたしも幸せです……っ」


 心の中で呟いていたはずが、途中から声に出てしまっていたらしい。


「あぁ……あははは……」

「えへへっ。せんぱい……っ♡」


 その表情からは、年齢に似合わない色気が溢れ出ていた。


 凛々葉りりはちゃん、なんだか…………エロい。


「ねぇ……せんぱい」

「ん?」

「初めての経験は、どうでしたか?」

「っ! ……気持ち良すぎて、どうにかなっちゃいそうだった……」

「ふふっ。せんぱい、無我夢中でしたからねっ」

「…………っ」


 一つ一つ教えてもらいながら進めていたから、他のことを考える余裕は全くなかった。


 つまり。彼女の言う通り、無我夢中だったのだ。


「ぎこちなくても一生懸命なせんぱいを見ていたら、思わずキュンとしちゃいました♡」


 そう言って、凛々葉ちゃんは腕を絡めてきた。


「ぎ、ぎこちない……」


 あれでも頑張ったつもりなんだけどな……。


 とショックを受ける俺に、彼女は続けて言った。


「せんぱいっ。抱いた子を気持ち良くさせて初めて、卒業なんですよ?」

「え……そうなの?」

「わたしの個人的な意見ですけど♪」

「……じゃ、じゃあ、気持ち良く……なかったってこと……?」

「どちらかと言うと、普通ですっ♪」

「そっ、即答なんだね……」


 うっ。さっき以上に精神的ダメージが……。


 どちらでもなく『普通』、か……っ。そりゃそうだよな……初めてだったんだし……。


 落ち込む俺の耳にそっと顔を寄せて、彼女は呟いた。


「なので、これから一緒にお勉強していきましょうね♡ …………いつか、わたしを満足させられるように……♥」

「……っ!!?」


 俺は素早く起き上がって正座になると、真っ直ぐ彼女を見て言った。


「しょ、精進しょうじんします……っ」

「いいお返事ですっ♪ じゃあ~……」

「ん?」

「えぇ〜いっ♡」

「わぁっ……!?」


 凛々葉ちゃんは俺を押し倒すと、両手を俺の頭の横に置いて覆いかぶさった。


(こ、これは……っ!!!)


 視界に広がるのは、電気の明かりに照らされた彼女と……呼吸をするたびに揺れる『胸』。


 振り子のように揺れるそれをずっと見つめていたい……。


「せんぱいは胸が好きなんですねっ」

「好き……ですっ」


 ……嫌いな男子がいるとでも?


 すると、さっきよりも揺れが強くなった気がした。


「ワザと……揺らしてるよね……?」

「あっ、バレました?」

「バレバレだよ……まぁ、嬉しいからいいんだけど……っ」

「……ふふっ♡ んっ、しょっと……」


 凛々葉ちゃんは徐に身体を起こすと、お腹の上に乗ってきた。


「…………っ!?」


 じかの感触に、頭は一瞬でパンクしてしまいそうだ。


「り、凛々葉ちゃん……?」


 それはまさに、騎乗位のような構図だった。


 上から見ても、前から見ても絶景だったのだから、下から見ても、もちろん……


「ふふっ♥ “こっち”は、まだ元気が有り余っているみたいですよ?♥」

「え? …………あ」


 どうやら、体は正直者らしい。


「……じゃあ、そろそろ、第二ラウンドといきま…――」




 ガチャリ。




 ――――――…え。


 家には誰もいないはずなのに、急に部屋の扉が開いた。


 そして、突然のことで呆然とする俺が見たのは、




「どうして……お前がここに……」


 …――――――つぐみ。




「………………」


 つぐみは無言のまま、じっと俺たちを見ていた。


「――せんぱい?」


 凛々葉ちゃんの声が耳に入るよりも先に、彼女の冷え切った一言が耳に届いた。




「………………何をしているんですか、先輩」






~~~~~第二章へと続く~~~~~

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