世界の始め方
(滝澤、滝澤……!)
滝澤を呼ぶ声が波のように響いてくる。滝澤は答えない。もう少し、寝ていたかった。
(駄目だよ、そんなの。待ってる人……人なのかな?が、居るんでしょ?だったら、もう少し踏ん張らないと)
「(踏ん張る、ねぇ……そうは言ったってさ、俺は姉貴の下位互換だ。俺が居なくてもあいつが居りゃ何とかなる。負担を軽くするためだけに呼ばれたなんて気分が悪ぃ)」
(じゃあ、待ってる人達も滝澤じゃなくてお姉さんでいいと思ってるんだ)
「(それは……)」
(ほら、図星じゃん。わかったでしょ?行った行った。私も、やること終わったら迎えに行くから!待っててね)
「(湊……?)」
正体に気付いた時には、もう声は聞こえなくなっていた。
「湊!」
空に伸ばした滝澤の手を何者かが取る。ルナだった。
「滝澤、大丈夫?」
ルナの愛らしい瞳を見た滝澤は自分が今も尚異世界にいることを思い出した。そして、これまでの経緯もふわふわした頭で回想する。
「体は丈夫な方だからな。ちょっと窓から落ちたくらいじゃかすり傷すら付かねぇよ」
身体ほど気丈夫でもある。滝澤は自身がいつものように上裸にされていることに気が付いた。この男の脱がされ率は異常である。
「起きたな。濡れた服は干してある。まだしばらく乾かんが、私の分の服でも着るか?」
ヴィルは普段の鎧姿に羽織りという中途半端な恰好で窓際に立っていた。外は既に暗いというのに、和といった雰囲気の部屋にも布団は敷かれていない。
「そうだ、ナスカは?」
疑問符を浮かべた滝澤にルナが申し訳なさそうな顔をして二つ折りにされた紙を差し出した。
「げ、何か嫌な予感……」
Now Lording…
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