快晴の日の私

 久しぶりの快晴。雲ひとつない幸せ。

 こんな日に文句を言う人はいないだろう。


 薄ら色付いた木々。心地よく穏やかな陽射し。こんな日に不満を漏らす人はいないだろう。



 綺麗に並んだ静かな住宅街。

 犬の散歩と軽快なジョギングおじさん。こんな日にイライラする人はいないだろう。



 こんな日に1人腹を立て、太陽の陽射しが恨めしく思う人がここに居た。

 ──私だ。


 ギリギリまで頑張ったことが誰にもわかってもらえない悔しさや、人知れず誰かのためにした自分なりの心遣いにも気付かれず、それが別の誰かの手柄となったとき。自分の体が最悪の状態になった時。



「必ずあなたの努力は誰かが見てるよ。きっと救われる」よく聞く言葉。

 誰かとは誰? いつ見てるの? いつ救ってくれるの?

 ──私はなんてひねくれ者だ。




 私は特別、なんて思っていない。

 だけど、ちょっぴり期待する。

 この快晴の空の下、あ〜気持ちいいと叫びたい! 私はツイてる、運がいい! と。



 昨日までの涙の訳も知らないで、快晴の空はしたり顔。ほうら、気分がいいでしょう? ほうら、元気が出るでしょう? 雲ひとつなく濁りない空は、自信満々に聞いてくる。



 そんな時、私はこう答えよう。

 誰かが見てるとは、あなたのことだね?

 雲にはばまれ、雨に濡らされ、雷が暴れても、それでも雲の上はいつも快晴。




 だから私は頑張れる。どんな天気でも、そのずっと上は快晴だから。

 私の心が曇っていても、どんなに涙で土砂降りになったときも快晴だったのだ。



 つまり、どんなお天気のときも、私は雲ひとつない晴れ晴れとした青空をどこかに持っている。それに気づかせてくれた今日の快晴に感謝。


 あ〜、いい天気!

 私は運がいい、ツイてる、 気持ちいい! 叫んでみよう、毎日を自分で快晴にするために。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る