第29話 バルクVSユリウス
ユリウスが言いながら俺の髪を掴み上げ、更に切っ先を喉元に突きつけてきた。
まるでゴブリンみてえな顔で俺を嘲笑う。
「クィキキキキキキィ!!!!
どうだぁバルク?
怖えだろぉ?
死にたくはねえよなぁ?
だったら許してやらなくもねえ。
俺は優しい義弟様だ!
無様で情けねえ兄のお前が、この場で裸になって土下座してブヒブヒ泣き喚きながらユリウス様御免なさい一生雑巾の代わりに使ってくださいって無様に命乞いしてきたら許さざるを得ねえ!
そしたら特別に俺んちの便所掃除させてやるよ!!
俺があの黒髪のボインや青髪のロリ巨乳とヤってる所を毎日見ながらな!!!
ギャハハハハハハ!!!」
「うるせえって」
いい加減耳元で煩く感じた俺は、ユリウスの顔面を軽く手で叩いてやった。
鼻先に飛んで来たハエを追っ払うくらいの力加減で。
「ごっはああああああああ!!?!?」
するとユリウスは十数メートル吹っ飛び、反対の壁にぶち当たったかと思うとまるでピンボールのように部屋中を跳ねまわった。
10回程跳ねた所でビタン! と床に叩きつけられる。
無様に手足を痙攣させながらも、生きているところはさすが【剣聖】と言ったところだった。
ふむ。
それにしても、やはりここは人が造った迷宮らしい。
壁や天井に反発の魔法が掛けられている。
その効果により、大抵の魔法やスキルは効かない造りになってるみてえだ。
ただ部屋中に流れてる魔力量を考えると、仕掛けはそれだけじゃなさそうだが。
俺が迷宮の作りを気にしていると、
「て……てんめええええ!!!!
今なにしやがったああああああ!!!
てめえがこんなつええはずはねえええ!!!!」
ユリウスが立ち上がり叫んだ。
バキバキに砕けた外套付の鎧を強引に脱ぎ捨て、腰に帯びた剣を抜いて俺に斬りかかってきた。
こんな奴の剣、受けてやる義理もねえ。
そう思った俺は、俺の脳天目がけて振り下ろされたその刃に向かって「ペッ」と唾を吐き捨ててやった。
弾丸のように飛び出した俺の唾によって、ユリウスの剣が刀身半ばから砕け散る。
「は……!?」
急に軽くなった頭上の剣を見返して、ユリウスが目を真ん丸にした。
「お……? おおおおお俺の魔剣ライトグラムがあああああ!? ドラゴンに踏まれたって砕けねえ名剣中の名剣なのにいいいいいい!?」
ユリウスがまるでこの世の終わりのような顔をして、両手で頭を押さえながら床に崩れ落ちた。
目の前には砕け散った魔剣とやらの残骸。
よほど大事な剣だったらしい。
破片を一つ一つ掴んでは、残った刀身になんとかしてくっつけようとしている。
当然くっつくはずもなく、破片は零れ落ちるばかりだ。
泣きながら破片を拾っている。
「すまん。大事な剣だったのか?」
その様子があまりにも哀れなので、いちおう謝ってやった。
壊れて後悔するようなシロモノなら持ち出さずにしまっておけばいいのに。
「こ……こんなはずがねえ……!
こんなはずがあああああ!!!?
そうだこれは夢だ!?
俺がバルクに負けるなんてありえねえ!!!」
ユリウスが子供のように泣き腫らした顔で叫んだ。
ボロボロになった魔剣に縋りついている。
そんなユリウスはさておき、
「さて、そろそろ脱出するか」
俺がそう呟いた時だった。
「脱出……!?
ぐははははははは!!
バカが!!
お前はどうせこれでもうお終いなんだよおおおお!!!!」
急にユリウスが笑い始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます