第10話 偽氷融解
ついにトロイノイに、本当は記憶を無くしてなかったことを告白したマギヤ。
「え……?! な、なんで忘れたふりをしてたの?」
「……諸々を忘れた
「素直な思い……? 好き、とか……?」
トロイノイの、好き、という言葉に遠い目をしつつ、マギヤは、こう答える。
「……ヴィーシニャさんへの好きの種類に、どうも確信が持てなくて。
ヴィーシニャさんは清く美しく……蠱惑的もとい魅惑的、いや、魅力的な人ですし……貴方というものがいながらとも思いますが……」
「……で、その素直な思いって分かった?」
マギヤに少し近付いてトロイノイが尋ねる。
「……今思うのは、謝りたい……、許されるなら抱きしめたい……。
……抱擁は許されないとは思いますが、五体満足で、何者にも命を奪われることなく、お互い温かい身体でいる尊さを感じて欲しい……」
マギヤがそう答えてすぐ、ずっと正座でいる関係で、脚が痺れてきたのか、マギヤの姿勢が崩れてくる。
さらにトロイノイの太もも……いや、もう少し上の鼠径部周辺を見つめながら、どこか息苦しげにしている。
マギヤの呼吸が、「吸」と呼んでいいレベルに差し掛かり、心配とわずかな焦燥混じりにマギヤを呼ぶトロイノイの声に、マギヤはトロイノイの膝及び太ももの位置を確認し、トロイノイに跨がって四肢の全てでトロイノイに抱きつく。
それで、マギヤの息が、だんだんあるべき呼吸に戻っていく。
……その姿勢のまま、マギヤは本格的に眠った。
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