第3話 ロイヤルガーデン商店街

依頼人いらいにんとの約束までまた三時間ある。


朝っぱらに銃を使ったせいもあっていつもより空腹感くうふくかんが強い。キッチンでグラスに水を注いで口をつけながら黄ばんだ丸みを帯びた冷蔵庫を開けて中を見る。


「ミルクがない、残りの食料は…リンゴが3個とチョコレートバーがワンダースとトマトペーストが瓶半分か、冷凍のパンはたくさんある」


「缶詰も仕入れる必要があるな、今日はロイヤルガーデン商店街には行きたくないな」


ロイヤルガーデンホテル商店街は私の住んでいるアパートの裏にある建物と『スワンプケンジントン地域ヘイストストリート』を挟んだ場所にある ホテルは薄汚れているが食べ物から服、武器に加えてクイーンズ銀行ロイヤルガーデン支店、ドラッグストア  自警団勧誘場(奴隷斡旋所)ハローズのジジイ達の喫煙所(憩いの場)などがある小さなショップモールになっている。


ホームレスがうろついていることもあるので屋台などはない。


私の住んでいる地域は昔は由緒ゆいしょ正しき観光地かんこうちだったようだが今は薄汚れている。今のロイヤルガーデンホテルは店が埋め込まれた薄汚いモーテルのようにしか見えない。


今日は金曜日だからが賑わう日だ。なぜだかホームレス達やハローズの連中は薬を買うことに金を惜しまない。連中は二階のクイーンズの銀行ぎんこうで金を下ろすために歩道まで並ぶときたものだから間違いなく混雑こんざつしている。


金曜日のスワンプケンジントン通り沿いの店の前は地獄絵図じごくえずだが「ハローズミール・ショッパーズ」への入口はそのど真ん中にある。


今日の食糧を我慢するわけにはいかない、夜中に二十万ドルの仕事があるから必ずアレを飲んでおかないと依頼人どころか自分の身も守ることができない。


前のベロニカが持っていたセントラルタワーマンズ担保自己防衛許可証たんぽじこぼうえいきょかしょうというものがあるのだがとっくに期限きげんは過ぎているので目立つ殺しはできない。


私はリビングのベッド兼ソファーに投げてあったガンベルトを腰に装着して窓の外を見た。若干ではあるがが遠くで響いている。


北西15キロ先のハローズ南西検問所なんせいけんもんじょまでは格安タクシー(片道五千ドル)を利用するつもりだが帰りは歩く予定だ。必ず厄介な連中に絡まれるだろう。彷徨う有象無象には負ける気がしないのだが。


「忙しい日になるな」


私は銃の残弾を確認した。


「五発」


ガンベルトについているミントタブレットケースよりも少し大きい銃弾入れを振って重さを確認する。ガラゴロと音がした。


「こちらには六発、銃弾も買っておくか」


ベロニカは玄関げんかんの壁にかけてある鏡を見て髪をチェックして冷たい笑顔を浮かべた。


「さっさと片付けるわよベロニカジャスミン」





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