第53話 目覚めのアッシュ
ブラウズはシェルを守ることができなかった。
それは君としても同じ事だ。
悲しい気持ちを初めて感じる。
倒れてブラウズに助けられてからシェルに、君はずっと世話を掛けていた。
動かない腕を解してもらった。食事を作ってくれた。他愛のない話もした。
町に買い物にも連れて行ってもらった。魔物と一緒に戦った。
いつも気に掛けてくれていた。
君は歩きながら、ブラウズの落としたペンダントを拾った。
シェルから流れている血がまだ広がり続けている。
このままでは
シェルが死んでしまう。
『このままじゃ嫌だ』と強く思った。
アンジェリカのペンダントが強く輝いている。
君の強い願いに応じて輝きが増しているようだ。
不意に『信じ続けていれば神は必ず応えてくれる』というゼノの記憶にあったアリアの言葉を思い出した。
そうだ、こんな悲しい結末は信じない。
よく考えろ。君はそもそも何だのだ。何のために作られた?
元々は『アリアを生き返らせるため』に君はいた。
ならば、できるはずだ。
信じろ。君は『
その願いは『シェルを生き返らせる』こと。
だから叶えて欲しい。
君は全身の痛みと気が狂いそうなほどの高揚感を高めて両手の中にあるペンダントに願い続けた。
そして、シェルが生き返る事を信じ続けた。
『聞け、アッシュ。神からの伝言だ』
驚いた事に、ゼノと一緒に消えたはずのシードからの声が聞こえた。
『時間がないから手短に言う。そのまま願い続け、天に届くくらいの魔力を捧げよ』
君は頷くと、激しい痛みも気が狂いそうになるくらいの高揚も無視してひたすら己の中にある魔力を高め続けた。
高めた魔力が制御しきれなくなりそうになった時、君は覚醒する。
それはどこからともなく君に届いた人ならざる者の声。
『よくぞ、天にも届く力を示した。
全身を信じられない力が満ちあふれて、今なら何でもできるような万能感に満たされる。
今、君は神として目覚めたのだ。
『
君は頷くと、どうすればいいのか尋ねる。
『本来であれば、人が人を蘇生させる事はできない。だが、今回は人が人を蘇生させる事に該当しないため、特別に許可しよう』
君は安堵すると、まだ次の言葉が続いた。
『だが蘇生した場合、
君は力強く頷くと、その身に余る力をシェルに向ける。
強く願う君の思いは魔法となり、一人の少女を死という失われたはずの命に火を灯す。
シェルの身体が金色の光に包まれ、強い輝きが収まると傷も血の跡もないシェルの美しい顏がそこにあった。
規則正しく上下する胸元と吐き出される息を感じて、ブラウズは叫んだ。
ただ一言、シェルと。
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