第36話 巨影を迎え撃つ

 打ち付ける音がどこから聞こえているのか君は探した。

 この鋭く打ち付ける音に君は聞き覚えがあった。

 それはブラウズが白い渦を斬りつけた時の音と同じだった。


 君は大声でブラウズに伝える。

 巨大なドラゴンに君自身が狙われている事を。


「アッシュか! 今からそっちに向かう!」


 ドラゴンの背後あたりからブラウズの声が聞こえてきた。

 カンカンと矢が弾かれた音と共にブラウズがシェルを肩に抱えて走ってくる。


「お父様、私はドラゴンの足止めをしておきます」


 シェルがブラウズの肩から降りると、正確にドラゴンの目を矢で射る。

 矢は刺さらずに弾かれるが、その度に歩みが止まっていた。

 この距離から当てるシェルの弓の正確さに君は驚く。


 ブラウズは少し息を整えると君に事情を聞いた。


「どういう事だ、何故アッシュが狙われているんだ」


 分からないが、目が合った事を君は伝えた。


「なるほど。だから攻撃をしていないアッシュに向かって歩いているのか」


 ブラウズは少し考えると、アッシュに聞いた。


「まだ、町の人たちは逃げている最中だ。他の兵士たちは、紫色の小鬼ゴブリンを抑えているので手一杯になっている。いいか、あのドラゴンは通常の倍以上の大きさだ。被害をこれ以上出さないためにも、ここでヤツを止めないといけない」


 君は頷くが、あの巨体を相手にどうすればいいか分からなかった。

 本当に分からないのだろうか。

 いや、君は知っているはずだ。


 激しい痛みを伴いながら見たものがあった。

 記憶の中から君は……。

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