第35話 巨影の名は

 新たな道を歩むと答えた。

 たとえ、記憶が戻ったとしても君はアッシュとして生きる事を決めたのだ。


「だが、契約は忘れるな。いずれその時が来れば、果たさねばならない」


 シードの声に君は頷いた。

 そして、君は君なりの復讐を果たそうと、心に誓う。


「いつまでも寝てはいられない。目覚めの時間だアッシュ。まさか、こう来るとは……」


 シードの声が途絶えると、大きな揺れを感じて君は目覚める。

 見慣れたベッドから起き上がると、部屋から出る。

 家の中に人のいる気配がしない事を確認すると、外に出る。



 今日は曇り空なのかと思うようなくらい少し薄暗い。

 見上げると、そこにはドラゴンがいた。

 大きな巨体には緑色に覆われた鱗に覆われており、背中からは大きな翼が見えている。

 巨大な前足の鉤爪が大通りの歩道を難無く破壊している。


 ドラゴンは何かを探しているようだが、見下ろした時に君と目が合うとこちらに向かって来る。巨大な口を少し開き、辺りに死を振りまくかのように歩いてきている。

 幸い、子供が走ってくる程度の速度だが、それでも留まっていればすぐに君のいる場所まで到達するだろう。

 

 移動しなければ、ブラウズの家は崩壊してしまう。

 君は急いで大通りの広場へ移動した。


 一人だけ白衣を着ている男が目に付いた。

 その男はドラゴンを一瞥すると、ゆっくりとその場を去って行った。

 あの姿は、どこかで……。


 広場からは悲鳴が上がり、驚きと戸惑いで逃げ惑っている人々が残っていた。



ドラゴンが攻めてきたぞー! みんな逃げろー!」

「いやあ! 焼かれて死んじゃうわ!」



 遠くからの振動と何かを打ち付けるような音が聞こえている。

 大通りからドラゴンの巨体がゆっくりと君に向かって来ていた。

 君はドラゴンを迎え撃たなければならない。


 あまりにも巨大な姿に圧倒されながらも、君は……。

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