第34話 失われた記憶の行方

 聞く事にする。

 君は記憶についてどうしても取り戻したいとシードに伝える。


「対価として、記憶を取り戻したいのだな?」


 君は迷うことなく頷いた。

 この力が何なのか、知らない事にはいずれ意識が何かに捕らわれてしまうような気がしたのだ。


「いいだろう。これ以上の事はできないが……さあ、思い出してみろ、お前の記憶を」


 君の頭に痛みが走る。

 脈打つように痛みの波が強くなってくる。

 

 激しい痛みの波の中で見知らぬ白衣を着た男がいた。

 そして無数にも思える棺のような透明な容器、流れ込む様々な記憶。

 その中でも特に白衣の男に君の心がざわつく。


 そうだ、君はこの男を許す訳にはいかない。


「少しは何か思い出したか」


 君は頷くが、完全に思い出してはいない事を伝える。


「記憶が無くなるか。逃げられた時の対策……保険か」


 記憶が消えてしまうというシードの言葉に君は考える。

 確かに逃げたような気もする。

 定かではない記憶の断片を思い出すが、霧がかったままで何も見えない。


「記憶に縛られ生きる者もいれば、記憶から解放され新たな道を歩む者もいる。お前はどちらだ、アッシュ」


 シードの問いに君は……。

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