第33話 声の不安

 君は眠っていた。

 ブラウズに背負われて、家に戻ったところまでは覚えている。

 初めて世話になった時のように、君の身体は動かない。


 そしてあの声が君に聞こえる。


「よく亡者共を鎮めた」


 亡者共とは何なのか君は聞いた。


「あれは罪人の成れの果て。いや、造られし人の罪。本当に何も覚えていないのだな」


 君は頷いて答える。

 そして何度も呼びかけてくる声の名を尋ねる。


「我等に名などありはしない。お前だけだ、アッシュと名を持つのは……いや、あるいは相応しいとも言うべきか」


 名に対しての反応が少し羨むような声に聞こえる。

 君は、声に対して名の提案をする。


「我等の名をシードだと……」


 声は戸惑い、呻くような苦しみや悲しみが響く。


「了承した。我等はシードだ。この名の対価として一つ教えよう」


 君の身体が少しずつ痛み出した。

 それと同時に力が沸き上がってくる。

 大男と戦った時の力と同じ様に意識が高揚してくる。


 この力に対する戸惑いと、意識の高揚についてシードに聞いた。


「我等は切っ掛けを与えたに過ぎない。アッシュは元々その力を有していた。だが、記憶の欠如によって力の使い方が分からないのだろう」


 君はシードに失った記憶の取り戻し方を……。

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